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イーサリアムの失敗と計り知れない可能性とは?
広瀬 隆雄
わかりやすいグローバル投資レポート
グローバル投資に精通する広瀬隆雄氏に、新興国株式だけでなく、米国株、欧州株をはじめとする先進国株式など、海外全般の経済や投資ストラテジーをご紹介いただきます。

イーサリアムの失敗と計り知れない可能性とは?

2018/2/13
・イーサリアムの起源
・イーサリアムの使いみち
・仮想通貨イーサーとは?
・順次グレードアップしているイーサリアム
・The DAOの失敗
・イシュー・スケジュール
・まとめ
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イーサリアムの起源

 2013年にロシア生まれカナダ育ちのヴィタリック・ブリテンという若者がイーサリアムに関するホワイトペーパー(=白書)を公表しました。

 彼はビットコインとそれを駆動するブロックチェーン技術の可能性にワクワクしたものの、ビットコインの限られたプログラム能力に不満を感じ、一から設計しなおすことで、ビットコインより遥かに柔軟性を持ったブロックチェーンを編み出したのです。それがイーサリアムです。

 その結果、ビットコインが「カシオ電算機」くらいの追加的な演算しかこなせないのに対し、イーサリアムは汎用PCくらいの柔軟性を持つことが可能になりました。これにより初めてデベロッパーたちがブロックチェーン上で、あらゆるアプリケーションを自由自在に設計することが可能になったのです。

 イーサリアムの手引書はしっかりしており、ユーザー・インターフェースは使いやすいです。従ってコンピュータに詳しい人なら短時間でアプリケーションが自作できるし、ブロックチェーン技術を使っているのでセキュリティーの面でも堅牢です。さらに他のアプリケーションと連動することも比較的容易に行えます。

イーサリアムの使いみち

 イーサリアムではスマート・コントラクトというものを自作することができます。それは「IF___, THEN___」という条件付けに従って、自動的に約束事を履行することを予めプログラムすることができることを意味します。

 一例として「もし生命保険加入者が死んだら、それが自殺でない場合は保険金をいくら払う」ということを電子的な契約書化することができるのです。これは後から恣意的に変更や改ざんができないので、コインを入れたら缶コーヒーがでてくる自動販売機に例えられます。これを使えば、保険金の未払いなどのミスが防げるわけです。住宅抵当証券や土地登記なども同様の方法で自動化しやすいと言われています。

 スマート・コントラクトの応用範囲は極めて広汎で、企業だけでなく、非営利団体の活動や、地方政府など、共通の利害を推進するために複数の参加者が何らかの合意をする場面のすべてに応用できます。それらのスマート・コントラクト化された組織をDAOs(decentralized autonomous organizations)と呼ぶ場合もあります。またスマート・コントラクトは約束事がちゃんと履行されたかどうかの判定や監査の必要をなくすため、弁護士や公認会計士の仕事のかなりの部分を奪うだろうと言われています。

仮想通貨イーサーとは?

 イーサーとはイーサリアムのブロックチェーンで使用される仮想通貨を指します。イーサーはビットコイン同様、マイニングという手法を使い、個々の取引を検証(=そのことをPoW、プルーフ・オブ・ワークと言います)する際のインセンティブに使われます。イーサリアムに依拠したスマート・コントラクトを履行する際使用されるイーサーは、ちょうどクルマに注入するガソリンのような存在なので「ギャス(gas)」と言われることもあります。

 世の中でたくさんのスマート・コントラクトが使われ始めると、それらの約束事を駆動する「燃料」の役目を果たすイーサーの使用例も自ずと増えることが予想されます。そうやって実際に使用されるケースが増えれば増えるほど、たんなる投機の対象としてのイーサーの売買だけではなく、「実需」も増えるというのがイーサーの支持者たちの主張です。

イーサーの特徴をまとめると次のようになります:

低取引コスト YES
高速処理 YES
トークン保有者の集中 NO
オープンソース YES
マイニング(PoW) YES
ブロックチェーン技術の使用 YES
分散台帳の使用 YES
トラストレス  YES


順次グレードアップしているイーサリアム

 イーサリアムの最初のリリースは「イーサリアム・フロンティア」と呼ばれるネットワークで、2015年7月から稼働しました。これは骨格だけのソフトウェアで、いささか使いにくかったです。2016年になると「ホームステッド」というバージョンがリリースされました。そこではアプリケーション・テンプレートと呼ばれる雛形が容易されており、わかりやすいインターフェースになっています。さらに2017年10月には「メトロポリス」というバージョンがリリースされました。

 ゆくゆくイーサリアムは次世代の「セレニティー」にアップグレードしてゆくロードマップを持っています。「セレニティー」ではこれまでのPoWによる検証をPoS(プルーフ・オブ・ステーク)という検証方法に移行する予定です。

 PoSの利点はPoWが莫大な電力を浪費するのを避ける点にあります。また個人でも検証のノードを運営することがしやすくなるので、マイナーの寡占化を食い止める狙いもあります。  

 PoSモデルではノードはランダムな方法で選ばれます。またノードの選抜にあたってネットワークのステーク(通貨保有量)が多い人がより高い確率で選抜される仕組みになっています。

 PoWはビットコインにも採用されており、それがちゃんと機能することは証明済みです。しかしPoSはそれがちゃんと機能するかどうか未知数の部分があります。言い換えればPoWからPoSへの移行は、イーサーへの投資をする際のひとつの潜在的なリスク要因だということです。

The DAOの失敗

 イーサリアムを語る時、最初のDAO(スマート・コントラクト化された組織)の例として華々しくデビューしたThe DAOが、とんでもない失敗をしてしまったエピソードに言及しないわけにはゆきません。

 The DAOは、単純化した言い方をすれば「イーサリアムのベンチャー・キャピタル・ファンド」のようなものを目指していました。1万人を超える投資家から26日間で1.62億ドルの資金を調達したのですが、The DAOのコードにバグがあり、何者かが5千万ドルを盗み出してしまったのです。

 そもそもスマート・コントラクトの価値提案は、取引のルールをコーディングにより決めることにあるわけですから「コードこそが掟」になるわけです。するとそのコードを書き間違えて、その結果として5千万ドルが盗み出されても、それは間違ったコードを書いたほうが悪いことになります。

 イーサリアムのコミュニティーはこの事件に対して「ニュー・イーサリアム」を作りThe DAOを解散することで失われた5千万ドルを無効化しました。このように新しいバージョンの通貨を無理矢理出してしまう方法をハード・フォーク(hard forking)と言います。

 こうやってできた「ニュー・イーサリアム」は現在、イーサリアムの名称を継承しています。そしてオリジナルのイーサリアムは「イーサリアム・クラッシック」という名称で現在もトレードされています。

 本来、ブロックチェーン技術の美点は、後から改変できない(=そのことをimmutableといいます)点にあるのですが、イーサリアムの場合、ハード・フォークによりThe DAOの問題を強引に解決してしまったので、みずから「禁じ手」を使ってしまったわけです。

イシュー・スケジュール

 現在の発行済みイーサー数は9,800万です。2017年中に新規の供給が10%ありました。しかし今後、インフレ率(=全体に占める新規の供給のパーセント)は0.5%~2.0%に抑えされる見通しです。ただしビットコインと違ってイーサーは最大限の供給数(=これをhard capと言います)が決められていません。

まとめ

 イーサリアムは汎用コンピュータのように自由自在にプログラミングが可能であり、しかもユーザー・インターフェースがとても使いやすいので今後のイノベーションの中心になると思われます。

 スマート・コントラクトは契約の履行の自動化を押し進め、法務コストや監査コストを大幅に軽減することが期待されています。イーサーはイーサリアムの仮想通貨ですが、スマート・コントラクトを駆動する際の「燃料」の役目を果たします。従ってスマート・コントラクトが一般化すれば、「実需」が増えることが期待されています。

 The DAOの失敗でイーサリアムがハード・フォークしたことでイーサリアムの威信は傷つきました。またPoWからPoSへの移行は潜在的なリスクを内包しています。さらにイシュー・スケジュールにハード・キャップが設定されていないことも不確実性をもたらしています。


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