プラチナ価格低迷の最も大きな原因は、EV台頭を意識した需要減少懸念よりも、自動車触媒向け需要がパラジウムへシフト

 ここ数年間のプラチナ価格低迷の最も大きな原因は、EV台頭を意識した需要減少懸念よりも、自動車触媒向け需要がパラジウムへシフトしたこと。

 以下の図は、プラチナ、パラジウム、金(ゴールド)の値動きを示したものです。CME(シカゴマーカンタイル取引所)のドル建ての先物価格です(期近 月足終値)。

 いずれも1トロイオンス(およそ31グラム)あたりの価格ですが、各貴金属間の価格の上下の関係が入れ替わりながら推移していることがわかります。

 プラチナと金においては、2015年1月におよそ1年10カ月ぶりにプラチナ価格が金価格よりも安くなりました。また、プラチナとパラジウムにおいても、2017年9月におよそ16年ぶりにプラチナ価格がパラジウム価格よりも安くなり、金とパラジウムは現在もその状況が続いています。

 プラチナは、金、そしてパラジウムとの比較において、2011年5月までは2000年ごろの供給不安を背景としたパラジウムが大きく上昇したときを除けば、3つの中で最も価格が高い貴金属でした。しかし、プラチナ価格はその後、下落トレンドとなり、上述の通り、金より、そしてパラジウムよりも安くなりました。

図:プラチナ、パラジウム、金(ゴールド)の先物価格の推移(期近 月足終値) 単位:ドル/トロイオンス

出所:CMEのデータをもとに筆者作成

 

 この背景には何があるのでしょうか?

 昨年ごろから世界的に大きな話題となっているEV(Electric Vehicle 電気自動車)が台頭した際に想定される、世界的なプラチナ需要の減少懸念でしょうか?

 仮にそうだとすれば、同じく自動車の排ガス浄化装置に用いられているパラジウムも同様の理由で価格が下落してもおかしくはありません。しかし、パラジウム価格はプラチナ価格が下落する一方で、大きく上昇しています。これにより、プラチナ価格はパラジウム価格を下回ったわけです。

 以下は、主に自動車の排ガス浄化装置(以下、自動車触媒)に用いられる貴金属(プラチナ、パラジウム、ロジウム)の需要の内訳です。EV台頭を意識する展開となれば、自動車触媒向け需要がプラチナよりも高い、パラジウム価格が下落することが想定されますが、実際はそのようにはなっていません。

図:自動車の排ガス浄化装置に用いられる主な貴金属の需要の内訳 (2016年)

出所:トムソン・ロイター GFMS「Platinum Group Metals Survey 2017」より筆者作成

 ここ数年間のプラチナ価格の下落傾向は、EV台頭を意識した需要減少懸念を背景としたものだけではない可能性があります。また、フォルクスワーゲン問題は2015年9月に発覚しましたが、すでにプラチナ価格の下落は2010年ごろから始まっていました。

※フォルクスワーゲン問題についてはこちら