また、以下は、先述の5つの国の乗用車の生産台数と販売台数です。

図:欧州5カ国の乗用車の生産台数・販売台数(2016年)

出所:OICAのデータより筆者作成

 

 5カ国を「自動車ネット輸出国」・「自動車ネット輸入国」・「自動車輸入国」の3つに分類しました。

 この5カ国が、各々が掲げた期限までに減少させる自動車触媒向け貴金属の自国内での消費量を、自動車ネット輸出国は販売台数分、自動車ネット輸入国は生産台数分、自動車輸入国は自国で生産が行われていないため「影響なし」とします。

※これらの国に自動車を輸出する国が自動車を製造する際に、内燃機関の自動車からEVにシフトさせ、その結果、自動車触媒向けの貴金属の消費が減少することも考えられますが、本レポートでは5カ国での増減をシミュレーションすることを目的としているため、考慮外としています。

 この結果、2016年分をもとに考えれば、5カ国は765万台を順次、EVにシフトし、それに伴い、自動車触媒向けの貴金属の消費量は減少していくことになると考えられます。

 この765万台と、先述の欧州における1台あたりの自動車触媒向け貴金属消費量を掛け合わせた、想定される5カ国における同消費量の減少分は45.1トン(765万台 × 5.9グラム/台)となります。この45トンを、2016年の自動車触媒向けに用いられた各貴金属の比率をもとに、貴金属別に置きなおしてみると以下のようになります。

 

図:本シミュレーションにおける貴金属別、自動車触媒向け消費の想定減少量

出所:OICAのデータおよびトムソン・ロイター GFMS「Platinum Group Metals Survey 2017」より筆者作成

 

 各貴金属の消費量の想定される減少幅は次のとおりです。

図:本シミュレーションにもとづいた欧州における自動車触媒向け貴金属消費量の推移

出所:OICAのデータおよびトムソン・ロイター GFMS「Platinum Group Metals Survey 2017」より筆者作成

 欧州5カ国で、新車販売を順次EVにシフトした場合、欧州の自動車触媒向けの貴金属の消費量が減少し、将来、欧州全体の同需要を40%程度減少させると想定されます。(2016年比)