フォルクスワーゲン問題も、EV台頭を意識した需要減少懸念も、プラチナ価格の下落傾向に拍車をかけた要因だと思われますが、根本的な下落要因ではないと考えられます。

 以下は、上記3つの貴金属(プラチナ・パラジウム・ロジウム)の自動車触媒向けに用いられた数量の合計を示したグラフです。

図:自動車触媒向けに用いられた3つの貴金属の数量(世界合計) 単位:トン

出所:トムソン・ロイター GFMS「Platinum Group Metals Survey 2017」より筆者作成

 世界の堅調な自動車生産動向を背景に、これら3つの貴金属の自動車触媒向けの消費量は、金融危機直後以降、増加傾向にあり、2016年には過去10年間の最高となる352.3トンに達しました。世界的に、自動車触媒向けの需要は拡大傾向にあることがわかります。

 加えて言えば、内燃機関を利用した自動車の生産が拡大傾向にあるということです。(2017年のデータは2018年前半中に公表される予定です)

 また、以下は、上図を3つの貴金属ごとに分解したグラフです。

図:貴金属別の自動車触媒向け消費量の推移(世界合計) 単位:トン

出所:トムソン・ロイター GFMS「Platinum Group Metals Survey 2017」より筆者作成

 

 これらの図より、以下の点がわかります。

1.世界の自動車触媒向けの貴金属の消費は、金融危機後の2009年以降、拡大傾向にある。2016年には過去10年の最高に達した

2.この拡大傾向の中で、全体の消費を押し上げたのは、パラジウムである。2016年時点では、パラジウムの自動車触媒向け需要はプラチナの同需要の2倍以上である。

3.プラチナとロジウムの自動車触媒向け消費は、金融危機以降、横ばいである。