地区別にこれらの3つの貴金属の自動車触媒向け消費量を示したのが以下のグラフです。特に目立った変化があった、欧州と中国についてです。
図:貴金属別の自動車触媒向け消費量の推移(欧州) 単位:トン
図:貴金属別の自動車触媒向け消費量の推移(中国) 単位:トン
上記の2つのグラフより以下のことがわかります。
欧州でプラチナからパラジウムへのシフトが起きた
欧州で自動車触媒向けに用いられている貴金属において、2010年から2011年にかけてプラチナからパラジウムにシフト。ちょうどプラチナ価格が下落に転じ始めたころです。フォルクスワーゲン問題が発覚したことで、欧州での自動車生産がディーゼル車からガソリン車にシフトしたことが一因であるとも言われていますが、パラジウムへのシフトは同問題発覚より以前より起きていました。このシフトの一因として、パラジウムがプラチナよりも価格が安かったことがあげられると考えています。
欧州の自動車触媒向け消費の総量はゆるやかに増加傾向
欧州の自動車触媒向けの消費の総量はゆるやかに増加傾向です。パラジウムへのシフト後も増加しています。フォルクスワーゲン問題発覚後も、欧州での自動車生産は増加しています。
中国でのパラジウムの消費が拡大している
中国で自動車触媒向けに用いられている貴金属において、パラジウム消費が拡大しています。2016年には欧州での自動車触媒向けのパラジウムの消費量を上回りました。この10年間で最も少なかった2008年の14.9トン年に比べれば、2016年は3倍の60.7トンとなりました。欧州の需要がもう一つ生まれたイメージです。
中国でのプラチナの消費が伸びていない
急増する同国の自動車触媒向けのパラジウム消費に対して、プラチナの同消費は低迷したままです。パラジウムはガソリン車で、パラジウムはディーゼル車で用いられることが多いとされますが、中国では排ガス規制などの政策的な面などから、プラチナではなくパラジウムが同国の事情に合っているのだと考えられます。
このように、欧州でのプラチナからパラジウムへのシフト、中国でのパラジウム消費の拡大・プラチナ消費の低迷が、プラチナ価格の下落、パラジウム価格の上昇、その結果としてプラチナ価格がパラジウム価格を下回る(パラジウム価格がプラチナ価格を上回る)という価格の関係の変化につながったと考えられます。