財産の贈与を受ければ、贈与税がかかる

財産の贈与を受ければ、当然贈与税がかかります。年間110万円までは無税ですが、それを超える金額の贈与については、金額が高くなればなるほど税率も高くなる仕組みです。

例えば、子どもが親から1000万円の株の贈与を受けた場合、贈与税は177万円です。これが2500万円の株になると、贈与税は810.5万円になります。

このように、生前にまとまった額の財産を贈与しようとすると、それを受け取った側に非常に大きな負担がかかってしまうのが避けられない事実です。

ある制度を使えば2500万円までは無税で贈与可能

でも、ある制度を使えば、2500万円までの贈与については贈与税がかからずに実行できること、ご存知でしょうか?それが、「相続時精算課税制度」というものです。

60歳以上の親もしくは祖父母が、20歳以上の子または孫に贈与をする場合など、一定の条件を満たした場合に適用が可能な制度です。

相続時精算課税制度を使えば、上記のように2500万円の株の贈与をした場合、それによりかかってしまう810.5万円の贈与税を支払わずに済むということです。

2500万円を超えた分はどうなる?

そして、2500万円を超えた分についても、一律20%の税率で贈与をすることができます。通常の贈与の場合、最高税率が55%になるなど、財産を受け取る側の負担が非常に重くなるのがネックになっています。でも、税率が20%になれば、税負担をかなり軽減することができます。

なお、この2500万円というのは、年間あたりではなく、この相続時精算課税制度を使って贈与をした累計額であることにご注意ください。例えば今年相続時精算課税制度により2500万円を無税で贈与し、翌年も2500万円贈与した場合、翌年の贈与については20%の税率で贈与税が課税されます。

また、ある人(例えば父親)からの贈与につき相続時精算課税を選択すると、父親からのその後の贈与についてもずっと相続時精算課税を使う必要がある点にも注意してください。

2500万円まで無税になるのはあくまでも「贈与税」の話

さて、この相続時精算課税制度、その言葉のとおり、「相続がおきたら、課税を精算する」制度です。

確かに2500万円までは無税で財産を贈与でき、それを超えた分についても20%という低い税率で贈与ができますが、それはあくまでも「贈与税」の話です。

財産を贈与した(渡した)人が亡くなって相続が発生すれば、その人の所有する財産について相続税がかかります。相続時精算課税制度とは、生前に贈与した財産についても、相続が発生したときに亡くなった方が持っていた財産に加算して、相続税を計算しようという制度なのです。

つまり、相続時精算課税制度を分かりやすく言えば、「生前の贈与は低い税率でさせてあげますよ。でも贈与した財産は相続発生時には相続財産に足し合わせて相続税を計算してくださいね」という制度なのです。言うなれば、課税を相続時まで繰り延べるというのが、相続時精算課税制度です。

相続税がかからない見込みなら全くの無税で財産の移転が可能

相続時精算課税制度は、贈与時に贈与税を軽減する代わりに、相続発生時には贈与した財産を相続税の課税財産に含めて相続税を計算する仕組みです。

ということは、財産を渡したい人が、相続税がかからないほどの財産しか持っていない場合は、相続時精算課税制度を使って贈与した2500万円までの財産については、贈与税もかかりませんし、相続税もかからないことになります。

例えば、父親からみて、相続人が母と子の2人、父親の所有する財産が4000万円あるとしましょう。この財産額は今後も変わらないとします。

こうした状況で、相続時精算課税制度を使って父親から子へ2000万円を贈与すれば、当然贈与税はかかりません。また、この2000万円を相続財産に足し合わせても4000万円となり、相続税の基礎控除額4200万円(3000万円+600万円×相続人の数)の範囲内に収まりますから相続税もかかりません。

財産を渡す側の総財産額によっては、相続時精算課税制度を活用すれば、贈与税も相続税も全くの無税で生前に贈与することも可能なのです。

このように、上手に使えばメリットも大きい相続時精算課税制度ですが、注意すべき点もあります。次回のコラムでは、相続時精算課税を用いて上場株式を生前に贈与する際の注意点や対策を中心にお話したいと思います。