執筆:窪田真之
今日のポイント
- 早ければ今日の午後にも米大統領選の大勢が判明する。今日は、大統領選の開票速報に注目
- 足元、世界経済は少しずつ持ち直しつつある。ただし、世界的な政治の不安は、簡単には解消しない。
(1)米大統領選は今日午後にも大勢判明へ
早ければ、今日の午後、東京市場が開いている間に、大統領選の大勢が判明します。東京市場が大統領選の結果を見ながら動く最初の市場になる可能性もあります。
クリントン候補が当選すれば、金融市場はそれを好感するでしょう。ただし、事前の世論調査でクリントン氏のリードがわかっていましたから、大きなサプライズとはなりません。
一方、トランプ候補が逆転当選となれば、金融市場にとって大きなネガティブ・サプライズとなり、株安・ドル安(円高)が進む可能性があります。
今日は1日中、大統領選の開票速報から目が離せません。
(2)世界的に政治の混乱が続くが、世界経済の体温は少しずつ上昇
政治と経済が、株式市場を動かす両輪といえます。今年の前半は、世界の政治と経済の両方に不安が高まり、世界的に株が急落しました。
ただし、今年の7月以降は、世界的に株が反発しています。世界景気が徐々に回復し、経済の不安が少しずつ解消しつつあることを反映していると考えています。
ところが、世界の政治不安は解消に向かっているとは言えません。今年は、さまざまな政治不安が、株式市場の波乱要因となりました。米大統領選のトランプ旋風に加え、ブレグジット・ショック(6月の英国民投票でEU離脱が可決されたショック)が株式市場のリスク・オフ要因となりました。資本主義を代表する米国と英国が反資本主義、反グローバル主義の波に飲まれつつあることが世界経済にとって脅威となりました。
今日の開票で、クリントン候補が大統領になることが決まっても、それで米国の政治不安が払拭できるとは思えません。ブレグジット・ショックとトランプ旋風の共通の背景は、ポピュリズム(大衆迎合主義)です。ポピュリズムの波は、来年以降も続きそうです。
一方、世界経済の体温は徐々に上昇しつつあります。世界的な長期金利の反発や、原油価格の上昇も、世界経済の体温上昇を示しています。
米英独日の長期金利推移:2016年1月―11月7日
WTI原油先物(期近)推移:2015年1月―11月7日
(3)世界の経済成長は続いている
波乱の多い世界経済ですが、世界全体で見ると、安定成長が継続していく見通しです。
IMFの世界経済の成長率見通し(GDP成長率):2016年10月時点
2015年実績 | 2016年IMF予想 | 2017年IMF予想 | |
---|---|---|---|
世 界 | 3.20% | 3.08% | 3.44% |
米 国 | 2.60% | 1.58% | 2.20% |
日 本 | 0.54% | 0.51% | 0.56% |
ユーロ圏 | 2.04% | 1.66% | 1.51% |
インド | 7.56% | 7.62% | 7.61% |
中 国 | 6.90% | 6.59% | 6.17% |
ASEAN5 | 4.76% | 4.83% | 5.11% |
ブラジル | -3.85% | -3.27% | 0.49% |
ロシア | -3.73% | -0.76% | 1.07% |
世界的に株は、世界経済の成長の恩恵を受けていくことになると思いますが、来年も政治が短期的な波乱を起こすことを繰り返すと思われます。
米大統領選挙動向については、下記もご参照ください。
特集名:2016年アメリカ大統領選と投資の世界市場をプロが先ヨミ!
リンク:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/special/us_presidential_election2016/