今日のまとめ

  1. アバークロンビー&フィッチに代表されるティーン向け専門店は客足が遠のいている
  2. アン、Lブランズなどの女性向け専門店は好調
  3. オフプライス・ストアのTJXは安定的な業績を誇っている
  4. 「アンソロポロジー」が好調のアーバン・アウトフィッターズも勢いがある

小売(専門店)セクターの概観

アメリカの小売店はショッピングモールと呼ばれる郊外型の集合小売施設の中に店舗を構えていることが一般的です。アメリカはクルマ社会なので、大きな駐車場を備えているそれらの施設の方が便利だからです。

普通、ショッピングモールは数十の店舗から成っており、その建物の両端にはアンカーストアと呼ばれる大きな店舗が入居しています。多くの場合、それはメイシーズやシアーズなどの百貨店です。それらの百貨店に挟まれる格好で、モールの通路沿いに出店している比較的小さな店舗の小売業者のことをスペシャリティー・リテーラーと呼びます。日本語では「専門店」と訳されます。彼らは特定の顧客層をターゲットとして特徴を出した品揃えを競っています。

米国の小売業の大きなトレンドとして1980年代を境に百貨店がだんだん廃れ、代わりに専門店の人気が高まるという傾向が現在まで続いています。ショッピングモールの大家さんは、家賃の一部をその店舗の売上高に連動して受け取ります。このため、売り場面積当りの生産性の高いテナントを優先的に入居させる傾向があります。

これは専門店の立場からすれば、消費者に受け入れられる、新鮮味のあるストア・コンセプトを展開できれば、比較的短期間にその成功を全米に展開してゆくことが可能であることを意味します。

このグループに属する主な企業は次の通りです:

ティッカー 銘柄名 事業内容
ANF アバークロンビー&フィッチ 若者向けカジュアル・ウエア
ARO エアロポステール ティーン向けカジュアル・ウエア
AEO アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ ティーン向けカジュアル・ウエア
ANN アン キャリア・ウーマン向け小売店
BKE バックル ファッショナブルなジーンズ
FL フットロッカー 運動靴、アスレチック・ウエア
GPS ギャップ カジュアル・アパレル
LTD Lブランズ ビクトリア・シークレットなど
LULU ルルレモン ヨガ・ウエア
TJX TJXカンパニーズ ブランド品のディスカウント。宝探し的なワクワク感を出したストア
URBN アーバン・アウトフィッターズ 若者向けの都会的なライフスタイルの商品を取り揃えている

ここ半年ほどの傾向としてティーン向け専門店は客足の低調が原因で苦戦しています。それ以外の専門店の業績には大きな異変は出ていません。

アバークロンビー&フィッチ

アバークロンビー&フィッチ(ティッカーシンボル:ANF)は若者向けカジュアル・ウエアの専門店で、ファッションに敏感な購買層をターゲットにしています。売上の63%が米国で、残りが海外です。全部で1,057店舗を展開しています。同社はグロス・マージンが68%と専門店の中でも飛びぬけて高い点が目を引きます。その半面、営業マージンは13%に過ぎず、ストアの演出に多くの経費がかかっている事をうかがわせます。

【略号の読み方】

  • DPS一株当り配当
  • EPS一株当り利益
  • CFPS一株当りキャッシュフロー
  • SPS一株当り売上高

最近の既存店売上比較は-10%で推移しており、客足は離散しています。顧客の支出が洋服からスマートフォンのようなデバイスへと移っているので、同社に限らず、ティーン向けの専門店はこのところ苦戦している企業が多いです。商品の動きが鈍いので、値引きプレッシャーが増大しています。同社は在庫の圧縮、コスト削減などで対応しています。

エアロポステール

エアロポステール(ティッカーシンボル:ARO)は14~17歳の若者をターゲットにした専門店です。このターゲット年齢層におけるマーケットシェアは第1位です。店舗数は約1,000店です。同社は良い商品を廉価で提供することを目指しています。8月締めの第2四半期決算では既存店売上比較が-15%も落ち込み、グロス・マージンも7%以上減少しました。新学期セールも冴えなかったので、次の決算も低調が続くと予想されています。

同社の場合、他のティーン向け専門店よりファッションに敏感な顧客層を相手にしており、そのぶん、ベーシック・アイテムの比率が低いです。それは他社より落ち込みが激しいことを意味します。同社は無借金経営で、運転資金面での心配はありません。

アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ

アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ(ティッカーシンボル:AEO)もアバークロンビー&フィッチやエアロポステールと同様、若者層をターゲットにしています。同社の場合、15~25歳がメインの顧客層です。店舗数は1,050店です。海外展開には消極的です。8月3日に締められた第2四半期の決算では既存店売上比較が-7%と冴えませんでした。客足の低調、値引きセールの影響で業績は大きく落ち込んでいます。

在庫は売上トレンドに比べて多めなので、値引きセールを継続する必要があり、これが今後も業績を圧迫すると見られています。同社の場合も無借金経営なので、運転資金面での懸念はありません。

アン

アン(ティッカーシンボル:ANN)はキャリア・ウーマンをターゲットにした専門店です。同社は、オフィスでも仕事が引けた後でもOKな、実用的で柔軟性のあるスタイルを提供しています。店舗数は984です。足下の業績はしっかりしています。下半期の既存店売上高に関する会社側のガイダンスは+5%前後です。婦人服はティーン向けカジュアル・ウエアのような落ち込みを見せていません。ただ雇用市場が減速した場合は、同社株も悪影響を受ける懸念があります。

同社は新しく2.5億株の自社株買い戻しを発表しており、これが株価を下支えすると思われます。

バックル

バックル(ティッカーシンボル:BKE)は特製の刺しゅう入りジーンズなど、比較的値の張るカジュアル・ウエアを扱っている専門店です。店舗数は440です。同社の9月の既存店売上比較は-4.5%と冴えませんでした。同社もティーン向け専門店が直面している、客足の鈍化の影響を受けています。

同社のジーンズは他では買えないものが多いため、値引き競争に巻き込まれるリスクは他社よりは小さいです。また同社は財務的にはたいへん堅実に経営されているため、深押しした局面では買いのチャンスと言えるでしょう。

フットロッカー

フットロッカー(ティッカーシンボル:FL)は運動靴やアスレチック・ウエアを中心とした専門店です。運動靴の市場は堅調なトレンドを示しており、同社の店舗刷新の努力と相まって、売上の見通しは明るいと言えます。

同社のEPS成長率は8%~10%程度と予想されています。また同社は配当利回りが2.4%あります。

ギャップ

ギャップ(ティッカーシンボル:GPS)はベーシックなアイテムを中心としたカジュアル・ウエアの専門店です。同社の場合も他のティーン向け専門店と同じ厳しい環境に直面しています。

同社は財務的に余裕があるので最近、増配を発表しました。配当利回りは2.2%です。また自社株買い戻しプログラムも継続しています。これらの要因が同社の株価の下支え要因になると思われます。

Lブランズ

Lブランズ(ティッカーシンボル:LTD)は「ビクトリアズ・シークレット」、「バス&ボディ・ワークス」、「ピンク」などの専門店を展開しています。

同社の「ビクトリアズ・シークレット」ならびに「バス&ボディ・ワークス」における売上トレンドはまずまずです。去年から今年にかけてのEPS成長率は専門店のグループの中では良い方なので、モメンタムを重視する投資家からは同社は注目されています。

ルルレモン

ルルレモン(ティッカーシンボル:LULU)はヨガ・ウエアなどを中心とする専門店です。同社は春先にヨガ・パンツが透けて見える不良品の問題に直面しました。現在もその後遺症が長引いています。さらに経営陣の入れ替わりが激しく、不安を抱かせます。クリスティーン・デイCEOは引退を表明しており、後任の人事は未だ発表されていません。

ヨガ・ウエアの市場は未だ成長の余地があると思われますが、目先は不安定な状態が続くと予想されます。

TJXカンパニーズ

TJXカンパニーズ(ティッカーシンボル:TJX)はブランドの在庫処分品を安く仕入れ、それを販売するオフプライス・ストアです。第2四半期の既存店売上比較は+4%で、小売業界を巡る厳しい環境の中では立派な成績だと言えます。

同社はコスト管理も行き届いており、経営的には安定しています。株価はそれを織り込んでしまっていて、新値を取っています。このため同社株には割安感はないと思われます。

アーバン・アウトフィッターズ

アーバン・アウトフィッターズ(ティッカーシンボル:URBN)は「アンソロポロジー」、「アーバン・アウトフィッターズ」などのストアを中心に若者向けのファッション性の強いアパレルやグッズの専門店を展開しています。

足下の既存店売上比較は+5%程度で推移しており、これは同業他社よりは良いです。「アンソロポロジー」は同社の売上高の約4割を占めていますが、いま最も勢いのある専門店のひとつだと言えます。