社会人1年目に投資を始めるも、株式投資、仮想通貨、FXとことこどく失敗し、7度の「退場」を経験。新型コロナで家に閉じこもる生活を送っていたとき、それまで繰り返してきた失敗を振り返り、どうしたら勝つことができるかを徹底研究。

 その後、「ダブルコア+サテライト戦略」と自ら命名する投資法にたどり着き、以降、安定した運用成果を上げ続けている──。今回は、そんな投資歴を持つ、30代投資家、投資熊さんにご登場いただきました。

投資熊さんのプロフィール

大学を卒業して大手企業に就職した2016年6月に投資を始める。2020年5月に市場平均を上回る運用成果を出すことを目標とする「コア+サテライト戦略」(その後、「ダブルコア+サテライト戦略」に)を考案。以降、マーケティング営業として会社員生活を送りながら株式投資を続けている。一方で、投資に関する情報を積極的には発信。「クマ」ワールド全開のXアカウントはフォロワー数10万人を越える。2024年6月、『これ一冊でクマらない!最強の配当株投資』を刊行。現在31歳(2024年10月現在)。
ブログ:投資熊のゆるふわ資産形成
X:投資熊癒しのどうぶつ投資家

楽して稼ごうとしたのが間違いだった

トウシル:今日は仕事終わりのお疲れのところ、インタビュー取材にご協力いただき、ありがとうございます(9月中旬平日夜オンライン取材)。投資熊さんは、会社に勤めながら投資にいそしむ一方で、ブログやXなどで投資情報を発信されています。また今年夏には投資本を刊行されました。本業もお忙しいでしょうし、体がいくつあっても足りないという状況ではないですか。

投資熊さん:本を出してから、今回のように投資メディアからお声を掛けていただくことも増えましたし、毎日慌ただしく過ごしています。私の投資法に関心を持っていただけるのはうれしいです。

トウシル:著書を読ませていただきましたが、とても読み応えがありました。投資熊さんは31歳とのことなので、それほど投資キャリアが長いわけではないと思います。それにしては投資に対して、ブレない、一本筋が通ったスタンスにたどり着いていらっしゃるので、投資経験が豊富な、もっと高齢の方の本のように思える部分もありました。

投資熊さん:本でも触れていますが、今のスタイルにたどり着くまでには、失敗ばかりしていたんです。投資の世界では、投資した資金を失ったりして撤退することを「退場する」といいますが、私は最初の4年間で、計7回退場しました。長年投資に関わっていると思っていただけたのは、たくさんの経験を経て、今の投資スタイルにたどり着いたからかもしれません。

トウシル:どんな失敗をしたか、具体的に教えてもらえますか。

投資熊さん:私は「お金の制約から逃れたい」「少しでも家族を楽にしてあげたい」という思いから、社会人1年目に投資を始めたのですが、最初からつまずきました。

 クルマが好きだったのと、父が日産の車に乗っていた、というような単純な理由で、当時、配当がよかった日産自動車(7201)の株を購入したのですが、買って数年で株価が下落、その後も回復するどころか下落し続け、やむなく損切りしました。それが1度目の退場です。

 その後、ネットの掲示板で「絶対に上がる」とうわさされていた仮想通貨を購入、一時は30倍以上にハネ上がったのですが、欲を出して売買を重ねるうちに大暴落し、再び退場に追い込まれました。さらに、それから少ししてSNSである投資案件を知り、出資したら、ものの見事にだまされて、ほぼ全額失いました。

トウシル:分かりやすく、派手に負けておられますね…。3度も失敗したら、もうそれ以降はさすがに慎重になると思うのですが…。

投資熊さん:懲りずに、飛び込んでは失敗をあと4回、繰り返してます(笑)。4度目は再び仮想通貨、5度目から7度目は全てFXによる失敗です。仮想通貨に懲りて、もっと確実に稼げるものはないかと探していたら、SNSで、FXで稼いでいる人を見かけ、「カンタンに稼げそうだ」と思って挑戦したのですが、FXでは3度続けて退場するハメになりました。

トウシル:なんというか…さすが熊レベルの、強いメンタルですね。

投資熊さん:Xでは「癒しのどうぶつ投資家」を名乗ってるのですが(笑)、当時は、投資スタイルは、失敗など考えずゴリゴリのどう猛な攻めスタンスなんです。けれど、私は投資を辞めようとはまったく思いませんでした。投資で成功して家族をより楽にしてあげたいという思いが強かったから、成功するまでチャレンジし続けようと思っていました。

トウシル:確かに! 負けたまま終われば「失敗」ですが、最後に勝てば「成功」ですもんね。でも、7度も退場し、借金で首が回らなくなるみたいなことはなかったんですか?

投資熊さん:それはなかったです。実は7度とも、再起できなくなるほどの額での退場、というわけではなかったんですよ。その都度の投資資金はそれほど大きくなかったのが幸いしました。

 最初に日産自動車の株を買った時は、学生時代に貯めた貯金があったこともあり、数百株まとめて買いました。そのため、それなりに損害が大きかったのですが、その後は大金をぶっこむことはしませんでした。仮想通貨もFXも少額で取引していました。それもあって7度退場しても再起できたんです。

トウシル:失敗はしたけれど、投資を始める際の「小額から始める」という鉄則は守っておられたんですね。「まだ31歳とお若いのに7度退場って、相当なギャンブラー熊なのか?」と思って取材を申し込んだのですが、さすがです。

投資熊さん:確かに(笑)。短期間で7度、退場をくらいましたが、傷は浅くてすみました。私は「失敗」が「経験」になったいい例です。投資初心者の皆さん、まずは、「自分が耐えられる範囲で」「何かあっても再起できる範囲で」始めたほうがいいですよ。

トウシル:発言に重みがありすぎます(笑)。

コロナ禍の10日間が、その後の自分を変えた!

トウシル:その後、自分なりの投資スタイルを確立し、8度目の挑戦の今は、安定した運用成績を残しているわけですが、何かきっかけがあったのですか。

投資熊さん:今でもよく覚えていますが、2020年5月のゴールデンウイークの時、コロナ禍で、家から出ない生活を強いられました。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発動され、外出しようにもできなかったんです。

 そのとき、約10日くらいですかね…、自分を見つめ直すというか…、失敗続きだった過去をじっくり振り返りました。で、「自分は失敗すべくして失敗したんだな」と改めて気づいたんです。どういうことかというと、仮想通貨にせよ、FXにせよ、まともな勉強ひとつしていなかった。

 自分の勘を頼りに、適当に銘柄を選んだり、誰かがSNSで取り上げていた銘柄を、何の検証もせず買ったりしていました。つまりは、「楽して稼ごう」と思って行動していたんです。そんなこと、できるわけないのに。

トウシル:それが2020年5月を機に、どうすれば勝つことができるかを真剣に考えるようになったんですね。その10日間、どんなことを考えていたんですか?

投資熊さん:それまではとにかくお金を増やそうと、それしか考えていませんでした。とにかくすぐ上がるものを買ってもうけてやろうと考えていました。実際、最初に仮想通貨を買った時のように、一時的には利益が出たこともあります。

 けれど、継続的に稼ぐことはできなかったし、欲を出して全額失ったりもしました。それで、いちかばちかの勝負に出るみたいなやり方では、一生お金は増えない、むしろ減らす一方だと思い至ったんです。

トウシル:ギャンブルのようなやり方ではダメだと思ったんですね。

投資熊さん:はい、それで短期間で増やすよりかは、配当金ももらいつつ、市場平均を上回ることを目標にしました。

トウシル:つまり、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの、株式指標の数値を上回る運用成果を目指すということですか?

投資熊さん:はい。市場平均と同等の運用成績を目指すのであれば全世界やS&P500種指数、日経平均、TOPIXに連動するインデックスファンドが適していますよね。

 でも、家族を楽にしてあげたいのと、自分もお金持ちになりたいので、やはり平均以上を目指したい。2倍、3倍、10倍になる銘柄は魅力ですが、現実的にはリスクが大きいため、まずは「平均」以上を目指しています。もちろん、努力や工夫は必要でしょう。でも、それを怠らなければ「市場平均以上」を目指すことは不可能ではないのではないかと考えました。

トウシル:投資熊さんは31歳とまだ若いので、これから先、まだまだ時間があります。だから、1年1年の運用成績が「平均」を少し上回る程度でも、複利効果で、将来的には大きなリターンを期待することができるかもしれません。

投資熊さん:そうあってほしいですね。

「ダブルコア+サテライト戦略」とは?

トウシル:では、市場平均を上回る運用成果を目指すために、実際にどんなことをされているのかを教えてください!

投資熊さん:私は「ダブルコア+サテライト戦略」と名づけているのですが、大きく「コア」と「サテライト」に投資対象を分けています。コアはその名の通り、ポートフォリオの中核を成すもので、長期保有を想定しています。

 具体的には長期的に株価の値上がりが、ある程度期待できて、なおかつ一定以上の配当金を得られそうな銘柄を選択しています。米国株ETF(上場投資信託)の「VT(バンガード・トータル・ワールド・ストック)」も保有しているのですが、それも「コア」と位置づけています。

トウシル:つまり、「コア」の大半は配当銘柄なんですね。

投資熊さん:はい、日本株に関してはそうです。米国株は、今はETFのみで、個別株は保有していませんが。

トウシル:なぜ配当銘柄を中核に据えているのですか?

投資熊さん:株式投資というと、多くの人は「売買差益で稼ぐ」というイメージをお持ちだと思います。株価が上がりそうな銘柄を買って、買ったときの値段より高くなったら売却して利益を得るという方法です。

 しかし、私は7度の退場を経験し、これまでのやり方よりは、安定的に配当をもらいつつ、ある程度のキャピタルゲイン(売買差益)を狙いに行く方法が合っていると感じました。

 その点、配当銘柄は、保有していれば一定の配当金を受け取ることができます。もちろん、その企業が業績悪化などで配当金を打ち切ったり、減配したりすることもあるので、配当銘柄なら何でもいいというわけではありませんが、その見極めを間違わなければ、利益を得ることかできます。そのため、ポートフォリオの中核に据えることにしました。

トウシル:米国の個別株にも高配当銘柄が数多くあります。それらを保有しない理由はなんでしょうか?

投資熊さん:米国株に魅力的な配当銘柄が多いことは承知しています。買ってみたい銘柄もたくさんあります。けれど、私は専業投資家ではないので、米国の個別株まで手を広げると、あまりにやることが多くなって大変です。本業にも差し障りが出かねない。それは避けたいので、米国株はETFに絞っています。

トウシル:一方の「サテライト」はどういう位置づけなのですか。

投資熊さん:「コア銘柄」は長期保有を前提とする配当銘柄が大半ですが、「サテライト銘柄」は、株価の急上昇が見込める銘柄などを保有しています。市場平均を上回るという目的を達成するには、そういう銘柄を取り込んでいく必要もあるかなと。

 もちろん、大きなリスクを取るようなことはしませんが。そこで、日本株か外国株か、配当銘柄かそれ以外か、大型株か小型株か、個別株かETFかなどの制約をいっさい排除したカテゴリーを設けることにしました。基本的には株価の上昇による利益を狙うことになるので、長期ではなく、短期および中期取引がメインになります。

トウシル:「サテライト」を設けることで、チャンスが訪れたときとか柔軟に対応できるようにしているんですね。

投資熊さん:はい、チャンスが来たときにすかさずリターンを狙えるバネを作っておきたいんです。

トウシル:「ダブルコア」ということは、もう一つ「コア」があるということですか。

投資熊さん:多くのデータを参照し、自分なりに考えて、今後特に伸びそうだったり、高い増配率が期待できそうな気配を漂わせていたりと、将来的に有望と思える銘柄を青田買いするために「第2のコア」を設けました。まずは少額から買い始めて、「コア」銘柄に育てていければと考えています。

トウシル:投資熊さんの投資戦略がよく分かりました。次回は具体的にどんな基準で銘柄を選んでいるのかなどについてお伺いします。

株価も配当も確保できるポートフォリオの中核「コア銘柄」とは別に、今後「コア銘柄」に成長しそうな銘柄を仕込んでおく。加えて、今後株価が急成長する可能性があり、売却益がゲットできそうな銘柄も確保した、投資熊流の「分散投資術」。不安定なマーケットでも、三つのどれかが生き残れば全滅退却は避けられると見ている。

後編「目標はひたすら「市場平均を上回る」こと!投資熊さんインタビュー[後編]」へ続く>>