9月雇用統計のレビュー

 前回9月の雇用統計では、NFPは前月比で33.6万人増え、市場予想の17.0万人を大幅に上回りました。ハリウッドの脚本家組合と製作会社が新労働協約で暫定合意したことも雇用増につながりました。さらに7月と8月の就業者は上方修正され、当初発表より合わせて11.9万人増えました。

 失業率は3.8%で、過去50年間で最も低い水準を維持しました。労働参加率は62.8%で横ばい。また平均時給は前月比で0.2%上昇、前年同月比では4.2%上昇しました。賃金の上昇ペースは2021年半ば以来の低い伸びとなりました。

 米国経済をサマリーしたものが雇用統計だとするならば、9月の雇用統計は、米国経済が、FRBやマーケットが考えるよりはるかに力強いことを示しました。

 FRBが「ちょうどよい」と考える就業者数のレンジは10万人から20万人程度といわれています。ところが9月の雇用者数は、月30万人を超え、さらに過去分だけでも12万人増えました。FRBが、金融政策は十分に引き締め状態なのかを自問するならば、答えは「まだまだ足りていない」ことになるでしょう。

 高金利でも企業の採用は拡大を続け、高インフレでも消費の勢いは止まらない。世界の他地域との格差は開くばかりで、まさに「米国例外主義」です。しかし、雇用データが強ければ強いほど、マーケットは米経済ハードランディングの予想を強めています。FRBがより強硬な手段に訴えることで、不測の事故の確率もより高まるからです。