例外的な状況の中、1万円到達

 金(ゴールド)は、世界各地で異なる通貨建てで同時に取引されています。取引量の多さ、歴史・慣習などの理由で、指標(中心的な存在)は「ドル建て金(ゴールド)」です。

 このため、ドル建て以外の金(ゴールド)価格は、指標であるドル建て金(ゴールド)価格に追随する傾向があります。今回1万円に到達した国内大手地金商の金(ゴールド)の価格も、ドル建て金(ゴールド)の価格に追随する傾向があります。

 しかし、しばしば、例外めいた状況が発生する場合があります。為替が大きく動いた場合です。国内大手地金商の金(ゴールド)価格は円建てであるため、ドル/円相場が大きく動くと、例外めいた状況になりやすくなります。今が、その状況に近いと言えます。

 足元、ドル建て金(ゴールド)相場は「高止まり」状態です。今年に入り、長期視点の高水準である1,920ドルをはさんだ、プラスマイナス120ドル程度のレンジ相場で推移しています。国内大手地金商の金(ゴールド)のように、急騰していません。

 指標(ドル建て金)がこうした状態の中で、原則それに従属的な立場である円建て金を急騰させているのが、「円安」方向に推移するドル/円相場の動きです。

 以下の図のとおり、ドル建て金(ゴールド)相場が高止まりしているのは、ドル高(FRB(米連邦準備制度理事会)が引き締め的な金融政策を継続することを示唆したことを受けて)起因の下落圧力と同時に、各種不安(中国の経済不安やウクライナ危機起因の不安が根強いことを受けて)が醸成する有事ムード起因および、代替資産物色(株価指数の乱高下を受けて)起因の上昇圧力が、同時にかかっているためです。

 また、円安が加速しているのは、FRB(米連邦準備制度理事会)による引き締め的な金融政策(相対的な円安要因)と、日本銀行による緩和的な金融政策が、同時進行しているためです(日米金利差拡大)。

図:ドル建て金(ゴールド)相場高止まり、円安加速の影響

出所:筆者作成

 ドル建て金(ゴールド)の高止まりは、国内大手地金商の金(ゴールド)価格を下支えしていると言えますが、急騰要因とまでは言えません。ドル建て商品に比べた割安感を醸成して価格を大きく上昇させている円安こそ、国内大手地金商の金(ゴールド)価格の大台達成に最も貢献した要因だと言えるでしょう。

 今後も、FRBが引き締め的な金融政策を継続することを示唆していることと、日銀が緩和的な措置を続けていることを受けて、さらに円安が進行する可能性があります。これは、引き続き、国内大手地金商の金(ゴールド)価格を押し上げる要因になり得ます。

 ドル建て金(ゴールド)価格が高止まりしていれば(少なくとも急落しない状態が続いていれば)、円安を手掛かりに、国内大手地金商の金(ゴールド)価格は、1万円台が定着し、次の大台(例えば1万1,000円)を目指す可能性があると、筆者はみています。