「人類が住まない地球がもう一つ」必要

「需要が急増するのであれば、それに見合うだけ供給を増やせばよい」と、誰しも考えると思いますが、実際のところ、そう簡単ではありません。以下は、世界三大穀物の収穫面積の推移です。

図:世界三大穀物(トウモロコシ、米、小麦)の収穫面積 単位:百万ヘクタール

出所:USDA(米農務省)のデータおよびIMF(国際通貨基金)の資料をもとに筆者作成

 近年、新興国・途上国の収穫面積は、増加しています。「この増加傾向を続ければよい」という声が聞こえてきそうですが、各種報道などを参考にすれば、この面積増加は森林伐採などの環境破壊によって実現したものであると、考えられます。

「望まれない収穫面積増加」が、長期化するとは考えにくいでしょう。森林が減少すれば、吸収できる大気中の二酸化炭素の量が減り、同時に大気中に排出される酸素の量が減少します。「焼き畑」によって畑の面積を拡大させた場合は、大気中に大量の二酸化炭素を排出してしまいます。

 森林伐採でも焼き畑でも、生態系を変化させてしまう可能性が高まります。環境問題解決を推進している先進国は、こうした手段による収穫面積の増加を認めないでしょう。

 社会や政治的な圧力により、新興国・途上国の収穫面積は今後、伸び悩む可能性があります。このため、新興国・途上国の需要は急増しても、それに見合うだけの供給を実現できない可能性があります(先進国の収穫面積はすでに横ばいになっている。増やさないのではなく、増やせない可能性がある)。

 作付面積や単収(単位面積当たりの収量)が今と変わらなければ、途方もない新興国・途上国の需要増加を満たすため、「人類が住まない地球がもう一つ」必要になる時がくるでしょう。