不動産投資で1億円

Sさん(男性・50代後半・会社員)

 Sさんは40代のころ、東京・品川区内に自宅用のマンションを約5,000万円で購入しました。当時はリーマン・ショックの後で、ほとんどの不動産が値下がりしていたタイミングでした。

 これをきっかけにSさんは不動産投資に興味を持ち始めて独学。自宅マンションを担保に、都心で2,000万~3,000万円の投資用不動産を複数購入しました。

 その後、アベノミクスによって景気が上向きはじめ、加えて東京オリンピックの開催が決定したことで、購入当時は底値だった不動産価格は一気に上昇。自宅マンションが1億円まで値上がりしたため、Sさんは「マイホーム(居住用財産)を売ったときの特例」(所有期間の長短に関係なく譲渡所得から3,000万円を控除)と、5年を超えて所有していたため、所得税率が低い「長期譲渡所得」の仕組みを使って売却。そのため、この時の売却益には、ほとんど税金はかかりませんでした。

 さらに、投資用不動産も、購入時から価格が5割程度上昇していたところで売却。金融資産と不動産の純資産(資産-負債)で1億円を達成したのです。

1億円達成の理由

解説:西崎努氏

 本来、不動産投資は不動産業者並みの専門知識が必要だったり、管理の手間がかかるなど、投資の中では効率が悪く、成功することが難しいと言われています。しかし、Sさんの場合は、なんといっても投資の時期が良かったのです。「安値で買って高値で売る」、正にこれを実現できました。

 自宅マンションの購入には個人の住宅ローンを使いましたが、投資用不動産の購入では、法人となって不動産投資ローンで資金調達しました。Sさんは長く会社に勤め、安定した収入があること、その収入も一定水準以上をキープしていることから、比較的ローン審査も通りやすい条件がそろっていたことも幸いでした。

 ただ、環境が良かったことに加え、Sさんだからこそが成功した理由もあります。それは「物件を買えるだけの頭金を積み立てていた」ことと、「投資用不動産が値上がりする条件(値上がりが期待できるエリアや部屋の広さなど)や金利、税金について、きちんと勉強してスタートした」ことでした。当時に比べて、現在の不動産価格もずいぶん値上がりしていますが、常日頃から準備や勉強をしていたことが結果につながりました。