日経平均の移動平均線からのかい離率の長期推移

 それでは、日経平均の13週移動平均線からのかい離の長期推移を見てみましょう。

日経平均と13週移動平均線からのかい離率:2012年1月4日~2023年6月23日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

 上のグラフの「かい離率」をご覧ください。0%、プラス10%、マイナス10%に線を引いています。

 日経平均はかい離率マイナス10%からプラス10%の範囲にほとんど収まっていますが、たまに10%より上に出たり、下に出たりしています。そこが、「過熱シグナル」「売られ過ぎシグナル」です。10%を超えてからすぐに反転するわけではありませんが、しばらくしてから相場反転が始まることがよくあります。

 このように、移動平均線のかい離率10%超えは、「過熱」「売られすぎ」の警戒シグナルとして有用です。ただし、実際にどう使うかは、難しいところです。以下2点に注意が必要です。

【1】かい離率が10%を超えたところから、相場が加速することもある

 13週移動平均線のかい離率10%超えは、「過熱」「売られ過ぎ」の警戒シグナルとして有用ですが、10%超えですぐに売ると、大失敗することもあります。というのは、上方かい離率が10%を超えたところから上昇が加速して、かい離率が20%まで拡大してから反落することもあるからです。

 下方かい離率の見方も同じです。10%を超えたところから下落が加速することはよくあります。かり離率が何%まで拡大したら反転するという、一般的な法則はありません。

【2】かい離率10%超えはあくまでも短期的なシグナル

 上方かい離率10%超えは、短期的に相場が過熱しているシグナルですが、あくまでも短期的なシグナルです。短期的に反落した後、さらに上昇トレンドが続くこともあります。

 例えば、2020年6月5日は、コロナ後の急反発で上方かい離率が16.6%まで拡大しました。その後、日経平均は一時反落しましたが、スピード調整を終えた後、さらに上昇トレンドが続きました。

 もちろん、短期的な過熱シグナルから反落し、結局そこが大天井で、下降トレンドが始まるという例も過去にはあります。

 移動平均線からのかい離は短期的な相場の動くスピードが速すぎることを示唆しているだけで、長期的なトレンドがどうなるかは、ファンダメンタルズの変化を見て判断する必要があります。