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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「日経平均に過熱シグナル?移動平均線からの上方かい離開く」
日経平均は11週ぶりの反落、パウエル議長から冷や水
先週(6月19~23日)の日経平均株価は、先々週末6月16日の終値3万3,706円と比較して、1週間で924円下落し3万2,781円となりました。先々週まで10週連続で上昇していましたが、11週ぶりの反落となりました。
日経平均が下がった背景として、以下二つがあります。
【1】パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、議会証言で年内2回の利上げが必要になると表明したこと
パウエル議長は21日議会証言で、「インフレ圧力は依然として強く、物価目標の2%に戻すまでには長い道のりがある」と述べました。
そして、6月14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で示された「年内あと0.25%の利上げが2回」という示唆(FOMCメンバーの予測中央値)について、「良い予想だ」と述べました。
早期利上げ停止、年内利下げもあり得ると織り込んでいる株式市場に冷や水を浴びせた形となりました。これを受けて、ナスダック総合指数(ナスダック)は先週1.4%安と反落し、日経平均にも利益確定売りが出ました。
【2】日経平均の上昇ピッチが速すぎて、スピード調整が必要と見る投資家が増えていたこと
日本株のファンダメンタルズ改善で、日経平均の先高感が強まっていますが、それにしても先々週までの上昇ピッチが速すぎることに警戒感も出ていました。移動平均線の上方かい離率が拡大していたので、スピード調整が必要と見る向きが増えていました。
日経平均と13週移動平均線:2017年1月4日~2023年6月23日
日経平均は、13週移動平均線よりも、上に飛び出したり下に飛び出したりしながら、長期的に13週移動平均線の周りで推移しています。
【1】13週移動平均線からの上方かい離率が10%を超えたら短期「過熱」の可能性
短期的に上昇ピッチが速すぎる時は、移動平均線からの上方かい離率が拡大します。私は、13週移動平均線からの上方かい離率が10%を超えたら、注意が必要と考えています。
日経平均の13週移動平均線からの上方かい離率は、6月12日に13.3%に開いていたので、上昇ピッチがやや速すぎると考えられる状況でした。ただし、先週、日経平均が反落したことで、上方かい離率は8.7%に縮小しました。
【2】13週移動平均線からの下方かい離率が10%を超えたら短期「売られ過ぎ」の可能性
コロナショックで日経平均が暴落した2020年2月25日に下方かい離率は10%を超え、2020年3月19日には25.6%に達しました。その後、日経平均は急反発しました。
日経平均の移動平均線からのかい離率の長期推移
それでは、日経平均の13週移動平均線からのかい離の長期推移を見てみましょう。
日経平均と13週移動平均線からのかい離率:2012年1月4日~2023年6月23日
上のグラフの「かい離率」をご覧ください。0%、プラス10%、マイナス10%に線を引いています。
日経平均はかい離率マイナス10%からプラス10%の範囲にほとんど収まっていますが、たまに10%より上に出たり、下に出たりしています。そこが、「過熱シグナル」「売られ過ぎシグナル」です。10%を超えてからすぐに反転するわけではありませんが、しばらくしてから相場反転が始まることがよくあります。
このように、移動平均線のかい離率10%超えは、「過熱」「売られすぎ」の警戒シグナルとして有用です。ただし、実際にどう使うかは、難しいところです。以下2点に注意が必要です。
【1】かい離率が10%を超えたところから、相場が加速することもある
13週移動平均線のかい離率10%超えは、「過熱」「売られ過ぎ」の警戒シグナルとして有用ですが、10%超えですぐに売ると、大失敗することもあります。というのは、上方かい離率が10%を超えたところから上昇が加速して、かい離率が20%まで拡大してから反落することもあるからです。
下方かい離率の見方も同じです。10%を超えたところから下落が加速することはよくあります。かり離率が何%まで拡大したら反転するという、一般的な法則はありません。
【2】かい離率10%超えはあくまでも短期的なシグナル
上方かい離率10%超えは、短期的に相場が過熱しているシグナルですが、あくまでも短期的なシグナルです。短期的に反落した後、さらに上昇トレンドが続くこともあります。
例えば、2020年6月5日は、コロナ後の急反発で上方かい離率が16.6%まで拡大しました。その後、日経平均は一時反落しましたが、スピード調整を終えた後、さらに上昇トレンドが続きました。
もちろん、短期的な過熱シグナルから反落し、結局そこが大天井で、下降トレンドが始まるという例も過去にはあります。
移動平均線からのかい離は短期的な相場の動くスピードが速すぎることを示唆しているだけで、長期的なトレンドがどうなるかは、ファンダメンタルズの変化を見て判断する必要があります。
日本株の投資判断
日本株は割安で、新たな上昇トレンドが始まっていると予想しています。短期的には急落・急騰を繰り返す可能性があり、リスク管理が大切ですが、時間分散しながら割安な日本株に投資していくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。
今、日本株への追い風として私が注目しているのは、以下4点です。
【1】インフレ復活で、名目GDP・企業業績・株価に押し上げ効果
2023年1-3月の名目GDP (国内総生産)は前期比年率8.3%の増加でした。2023年度の名目GDPは4%の成長を予想しています。インフレ・名目GDPの上昇が、日本の企業業績・株価に追い風となります。日本は少子高齢化で実質GDPの低成長が続きますが、名目GDPの成長が企業業績を押し上げます。
日本の名目&実質GDPの四半期成長率(季節調整済、前期比年率):2022年1-3月~2023年1-3月(2次速報)
【2】日本企業の利益は、海外で拡大が続く
日本企業は、人口が増加するアジアや欧米で利益を拡大させていく期待があります。
【3】リオープンで内需拡大の期待
米国は景気が過熱して深刻なインフレが起こり、今、景気減速局面ですが、日本はリオープンで内需回復期待が出ています。インバウンド(海外からの旅行者の消費)の増加も、消費回復に貢献が期待されています。
【4】自社株買い増加の期待
東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に、株主価値改善策の開示と実施を要請したことで、今後、日本株で自社株買いが増える期待が出ています。
2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ
今の株価上昇の背景に、2024年にかけての世界景気回復期待があると私は見ています。ただし、それを経済指標で確認できるようになるのは、かなり先です。経験則では、株価は景気循環を半年から1年先取りして動くからです。
株価が転換点を迎える時、ファンダメンタルズ分析だけでなくテクニカル分析も駆使して、マーケットの流れについていく必要があります。
そこで、今日は最後に、テクニカル分析を書籍で勉強したい方に、私が2021年12月にダイヤモンド社から出版した「株トレ」をご紹介します。
「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ」
私が25年の日本株ファンドマネジャー時代に得たテクニカル分析のノウハウを初心者にもわかりやすく解説しています。クイズ60問を解いて、トレーニングする形式です。株価チャートの見方がわからなくて困っている方にぜひお読みいただきたい内容です。
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