金融資本主義、そして、紙(ペーパー・マネー)の時代は終わった…

 米国株も堅調だが、こちらは米銀破綻を受けた流動性の供給によるものである。1月4日以降、米国では4,800億ドルの流動性が追加されたことになる。それ以来、ハイテクは流動性とともに上昇の一途をたどっている。だが、AI以外では、株価は景気後退のフラグが立ち始めている。

ナスダック100CFD(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

エヌビディア(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 このバブル相場の賞味期限は、何度も申しているように、米国の「利下げ」までであろう。

利下げまでの米国株の上昇は「死の舞踏」か!?

出所:石原順

 ドラッケンミラーは、「インフレが猛威を振るい、中央銀行が利上げ、脱グローバリゼーションが定着し、ウクライナでの戦争が長引く中、世界的な景気後退の可能性は過去数十年で最も高いと考えている」という。1982年に始まった金融資産の強気相場を振り返ってみると、そのブームを生み出した〈全ての要因〉は止まっただけでなく、逆転したのである。

 米国主導の世界的な金融制裁戦争の結果はどうなったのだろうか? 完全な失敗である。ロシアは、ウクライナの地上での運動論的戦争に明らかに勝利しており、金融戦争にも勝利している。今年、多くのアナリストが米国経済は深刻な不況に陥ると予想している時期に、ロシアはIMF(国際通貨基金)によって0.7%成長すると予測されている。

 バイデンは、ロシアがクリミアを含むウクライナから完全に撤退するまで、制裁は終わらないと主張している。ロシアは撤退しないだけでなく、軍事的・領土的に大きな利益を上げ続けている。ウクライナの攻勢は、よほどのことがない限り、この現実を根本的に変えることはない。つまり、戦争もインフレも簡単には終わらないのである。

 歴史的大局観から言えば、金融資本主義、そして、紙(ペーパー・マネー)の時代は終わった。私たちの生活を支えるには、金融よりも、モノの方がはるかに重要であることがわかったからである。今後、世界の国々で「金融」への関心が薄れ、「モノ」への関心が高まっていくことが予想される。

 2000年、2008年、2023年、それはいつも同じだ。人々は愚かなリスクを冒し、失敗する。その後、お金が印刷(QE5)される。

FRBのバランスシートの推移

出所:Otavio (Tavi) Costa