先週の日経平均は2万7,670円で終了

 先週末2月10日(金)の日経平均株価終値は2万7,670円でした。先週末終値(2万7,509円)からは161円高と小幅な上昇だったものの、週足ベースでは5週連続で上昇しています。

図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2023年2月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを上の図1で振り返ってみると、週初の6日(月)に一段高で2万7,500円台をクリアするスタートでしたが、その後は再び2万7,500円割れの場面があったほか、ローソク足の並びを見ても、陰線が多くなっているなど、上値を伸ばせない展開が続きました。

 とはいえ、前週は抵抗(レジスタンス)となっていた2万7,500円の「節目」が、先週は支持(サポート)として機能し始めているようにも見え、いわゆる「レジ・サポ」と呼ばれる格好になっており、終わってみれば堅調だったと言えます。

 さらに、先週末の株価は、昨年8月と11月の高値を結んだ「上値ライン」を十分にうかがえるところに位置しているほか、今後の値動きによっては、上向きを強めている25日移動平均線が75日と200日移動平均線を上抜ける可能性もあり、確かに買いの勢いは感じられないものの、上方向への目線は維持していると見て良さそうです。

 この日経平均の上方向への目線については、ボリンジャーバンドでも確認していきます。

図2 日経平均(日足)のボリンジャーバンド(25日)(2023年2月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ここ2週間程度の日経平均の値動きは、ボリンジャーバンドの「プラス2σ(シグマ)」と「プラス1σ」の範囲内での推移が続いていることがわかります。また、バンドの傾きに注目すると、プラス2σからマイナス2σまでの5本の線が全て右肩上がりとなっています。

 このように、バンドの線の傾きがそろっていて、かつプラスマイナス2σと1σのあいだで株価が推移する状況は「バンド・ウォーク」と呼ばれ、トレンドが発生している時に表れる形とされています。上の図2のチャートを過去にさかのぼってみても、バンド・ウォークの中で上値を伸ばしている場面がありました。

 今後の株価がプラス2σに向かっていくのであれば、2万8,000円台超えもあり得るわけですが、気になるのは、バンド・ウォークを維持し、「このまま順調に上値を伸ばせるのか?」です。

 そこで、今週の株式市場を取り巻く環境をざっくり整理してみます。主なポイントは以下の三つが挙げられます。

[1]週初は日本銀行(日銀)総裁の人事をめぐる報道を消化
[2]インフレ&景況感のスピード感と、金融政策への思惑という視点は続く
[3]「偵察気球」問題の影響(米中関係の悪化など)

 まず、[1]についてですが、任期満了を迎える黒田東彦日銀総裁の後任として、当初名前が挙がっていた雨宮正佳副総裁ではなく、元日銀審議委員の植田和男氏となる方針が、先週末に報じられました。今週の14日(火)に人事案が国会に提示される予定です。

 サプライズな人事案でしたが、その後の報道などで、植田氏は金融緩和維持の姿勢とされており、今後の相場の方向性が大きく変わることはなさそうです。

 ただ、過去に「長期金利のコントロールは政策微調整には向かない」と発言していたことや、誰が黒田総裁の後任となっても、金融政策の修正議論がつきまとうことに変わりはなく、今後もニュースの見出しなどに相場が反応する場面は多そうです。

 続く[2]については、国内の企業決算ラッシュが今週の13日(月)と14日(火)でピークアウトすることや、米国では14日のCPI(消費者物価指数)や小売売上高(15日)、16日のPPI(生産者物価指数)など、1月分の経済指標の発表が相次ぐスケジュール感となっています。

 次回の3月21~22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)までには、かなりの時間があるため、今週も経済指標の結果や、それを受けた景況感と金融政策への思惑に、敏感に反応しやすい相場地合いが続くことが想定されます。

 とりわけ、最近までの米国株市場は、先日のFOMC後の記者会見で、パウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長が「ディスインフレが始まった」と語ったことをきっかけに、上昇する場面が目立っていました。

 しかし、先週あたりからパウエルFRB議長をはじめとするFRB要人の発言トーンが、再びタカ派姿勢に傾き始めているなど、不安定となっており、それに伴って株価も伸び悩んでいます。

 その米国株市場の動きについても確認していきます。