元本割れは、する

 そう、投資信託は、あるとき必ず元本割れすると思ってないといけない商品。なぜなら、買った今日がその後を含めて、たまたま最安値の日で、翌日から上がる一方だったという「奇跡の人」以外は、明日か1年後か10年後かは分からないけど、必ず買値を下回る嫌な日を経験することになる。それはどんなに安心を謳っている投信だって基本、同じ。どこかで一度は元本割れの期間を経験するのが、ほとんどの投資信託の宿命であり、投資の宿命だ。

 投資信託を買うということは、そういう嫌な日が来るのを分かってて、でも長期的には報われることを信じて、嫌な時期のストレスを前向きに受け入れてがんばります!っていうこと。

 能天気だけど尊い「前向きな覚悟」「意志ある楽観主義」によって成り立つ、人生設計の一大プロジェクトだ。だから中途半端にあれこれ混ぜて覚悟が曖昧になるよりは、シンプルに株式100%の株式ファンドでいいと思う。

 僕は投資信託の業界に入って以降、投資関連本をずっと読んでいる。仕事として。その中で、どの本だったかは忘れてしまったんだけど、ある海外の翻訳本に「卵は複数の籠でなく、ひとつの籠に入れておけばよい。大事なのは入れたことを忘れておくことの方だ」みたいなことが書いてあった。

 本当にその通りだと思った。

 世の中には「長期投資はリスクを減らす」「資産配分が成果の9割を決める」「アインシュタインも認めた複利の力が長期投資のメリット」「ひとつの籠の卵は転ぶと全部割れちゃうので、複数の籠に分けましょう」といった、投資のセオリーらしきものが話されることが多い。

 また、プロも「アセットアロケーション」「シャープレシオ」「リバランス」といった、普通の人には実践困難な技術論を語ることがある。でも、できないことを勉強しても時間がもったいない。

 君たちはそういうのはすべて気にしないでいい。そんな勉強はしたくないだろうし、してほしくない。投資関連のネットもYouTubeも見ず、楽しいことや大事なことに時間を使った方がいい。ひとつの籠に入れて、入れたことを忘れて、仕事と生活の充実にエネルギーを注いでもらいたいと思う。