ASMLホールディング
1.2022年12月期2Qは35.1%増収、33.4%営業増益
ASMLホールディングの2022年12月期2Q(2022年4-6月期)は、売上高54.31億ユーロ(前年比35.1%増)、営業利益16.53億ユーロ(同33.4%増)となりました。
今1Qは、顧客の求めに応じてEUV露光装置を早期出荷した結果、検収と収益認識が遅れたため、出荷9台に対して収益認識3台に止まり、大幅減収減益となりました(前1Qの収益認識は7台)。一方で今2Qは、EUV露光装置の出荷14台に対して収益認識12台(前2Qは9台)と収益認識できたEUV露光装置が大幅に増加したため、業績が回復しました。
また、EUV露光装置以外のArF液浸、ArF、KrF、i線も順調に増加しました。EUV露光装置に次ぐ売上高であるArF液浸露光装置販売台数は、今2Q21台(今1Q18台、前2Q16台)、旧世代の露光装置ながら根強い需要があるKrF露光装置は今2Q38台(今1Q26台、前2Q31台)と増えました。
表3 ASMLホールディングの業績
表4 ASMLホールディング:売上高内訳(四半期)
表5 ASMLホールディングの機種別売上高、販売台数、単価(四半期)
グラフ6 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数
2.今2Qの全社受注高は過去最高となった
会社側は、半導体需要について、スマートフォン、パソコンなど消費者向けは需要鈍化の兆候が見られるものの、ハイパフォーマンスコンピューティング(会社側はデータセンター向けを指していると思われる)や自動車向けなどの産業向けでは、依然として強い需要が見られるとしています。
受注は好調が続いています。今2Qの全社受注高は過去最高の84.61億ユーロ(前年比2.3%増、今1Q比21.3%増)となりました。このうちEUV露光装置の受注高は今2Q54億ユーロ(前年比10.2%増、今1Q比2.2倍)と、これも過去最高となりました。
一方で、EUV露光装置以外の露光装置(ArF液浸、ArF、KrF、i線など)の受注高は30.61億ユーロ(前年比9.2%減、今1Q比31.6%減)となりました。過去最大となった今1Qから大幅に減少しましたが、高水準でした。
また、今1Q末290億ユーロから今2Q末330億ユーロに増加しました。
グラフ7 ASMLホールディングの新規受注高
3.今3QはEUV露光装置の高速出荷により再び減益に
今3Qの会社側業績ガイダンスは、売上高51億~54億ユーロ(前年比2.7%減~3.0%増)、営業利益14.5億~16.6億ユーロ(同24.4%減~13.5%減)と営業減益になる予想です(会社側ガイダンスの売上総利益率49~50%、研究開発費8.1億ユーロ、販管費2.35億ユーロより楽天証券計算)。今3Qも顧客の求めに応じて検査が十分済んでいないEUV露光装置を顧客の半導体工場に設置することを優先するため、EUV露光装置の検収、収益認識が遅れるとしています。これにはサプライチェーンの混乱により、EUV露光装置の部品調達が遅れていることも関係しています。
2022年12月期通期売上高予想は、会社側は前年比約10%増としています。前回ガイダンスの約20%増収と比べると下方修正になります。今期のEUV露光装置出荷台数は55台で前回ガイダンスから変更ありませんが、収益認識は前回会社予想では49台だったものが、今回は40台に減少する見込みです。これは収益認識の遅れによるものです。
このため楽天証券では、2022年12月期業績予想を前回の売上高225億ユーロ(前年比20.9%増)、営業利益72億ユーロ(同6.7%増)から、今回は売上高205億ユーロ(同10.1%増)、営業利益62億ユーロ(同8.1%減)に下方修正します。今期のEUV露光装置収益認識台数(販売台数)が下方修正されたことによります。
また、今期に収益認識できず来期に繰り延べになる9台について、来期の収益認識が来々期2024年12月期に繰り延べになる可能性はないのか不透明です。そのため、2023年12月期も前回の売上高282億ユーロ(同25.3%増)、営業利益100億ユーロ(同38.9%増)を、今回は売上高260億ユーロ(同26.8%増)、営業利益86億ユーロ(同38.7%増)へ下方修正します(楽天証券の2023年12月期のEUV露光装置出荷台数予想は70台→65台へ下方修正。これは部材不足による。同じく収益認識台数は66台→55台へ下方修正する)。
グラフ8 ASMLのEUV露光装置:販売、出荷台数
表6 ASMLホールディング:機種別サービス別売上高
4.今後6~12カ月間の目標株価を前回の800ドルから700ドルに引き下げる
ASMLホールディングの今後6~12ヵ月間の目標株価を前回の800ドルから700ドルに引き下げます。楽天証券の2023年12月期EPS予想19.34ドル(18.31ユーロを1ユーロ=1.0223ドルでドル換算)に2023年12月期の予想営業増益率39%増、想定PEG=1として、想定PER35~40倍を当てはめました。金利上昇も考慮しました。
今2QのEUV露光装置受注高が過去最高を更新したこと、全社受注残高が堅調に増加していることは、EUV露光装置の需要が供給を上回る状況が続いていることを示しています。これはASMLの中長期的な業績拡大を予想させるものです。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:TSMC(TSM、NYSE、ADR)、ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)