今日の為替ウォーキング

今日の一言

勝利を手にするためには、2回以上戦わなければならないかもしれない - サッチャー元英首相

Right Here Waiting

 ドルが弱い。

 豪ドルは、RBA(豪準備銀行)議事録の内容が大幅な追加利上げを示唆するタカ派的内容だったことから上昇。ポンドは、雇用データが強かったことに加え、BOE(イングランド銀行)総裁が8月に0.5%利上げと量的引締めの開始を通告したことから、こちらも上昇している。

 一方ドルは、来週の会合を前にFOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーが、金融政策や金融経済情勢について発言することが禁止されるブラックアウト期間に入ったため、利上げ幅など米金融政策に関する新しい情報はでてこない。

 そのなかで最も注目を集めるのは、21日(木曜)のECB理事会だ。現在のECBの主要政策金利のデポ金利は▲0.5%だが、今回7月と9月の会合で0.25ポイントずつ利上げして、マイナス金利を終わらせるという予想だ。

 数カ月前までは9月利上げ開始、年内にゼロ金利解除を目標としていたから、随分と前倒しになっている。ところが、高インフレとユーロ安の進行で、のんびりしたことは言っていられなくなり、明日の会合で一気に0.5%利上げする見方が強まっている。

 ECBは、FRB(米連邦準備制度理事会)と同じく、景気よりもインフレ対策に政策の重点を置くことを宣言した。しかしECBのフォワードガイダンス(政策指針)に「違反」するような過激な利上げが、為替だけではなく、域内周辺国の債券利回りの急上昇を引き起こすリスクが高まっている。

 そのためラガルドECB総裁は、欧州債市場の分断化(ドイツとその他の国の利回り格差の拡大)を軽減するために、「分断化阻止方策」と称する新ツールを今回の理事会でまとめ上げたい考えだ。

 イタリアでは、ドラギ首相が20日に議会演説を行う。連立政権を組む政党全ての支持を得ていないとして、辞任する意志は固い。そうなった場合には総選挙が実施されることになるが、極右政党がじわじわ勢力を広げていて、イタリア国内だけではなく欧州全体にとっても不安が広がる。欧州エネルギーなど経済問題に加えて政治的混迷でイタリアの国債が大きく売られる可能性がある。ECBの分断化防止方策がまとまったとして、果たしてデビュー戦のイタリアで効果を上げることができるのか?マーケットは注目している。

 ロシア産天然ガスのドイツへの供給ルートであるパイプライン「ノルドストリーム1」は今月11日から10日間の予定で「メンテナンス」中である。予定通り22日から再開される見込みで、供給停止という最悪の事態は回避された。しかし、パイプラインの稼働率は40%以下にとどまる模様で、状況が改善されなければ、ドイツのガス備蓄は「来年3月にゼロ」になる。

 英国ではすでに4月にガス料金が40%値上りし、10月にも再値上げの予定となっている。価格転嫁の上限をすでに超えてしまった民間ガス会社が、差損で次々と倒産している状況だ。この状況が欧州全土に広がるおそれがある。ただ、ロシアも天然ガスは貴重な外貨収入源(戦費)であるため、高度の政治交渉が続くことになるだろう。

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成