「資本主義への攻撃」ロシア100年越しの大願!?

西側におけるパラドックス発生の背景

 西側でなぜパラドックスが生じているのでしょうか? 筆者は「欲望の扉を開いたため」だと、考えています。西側が是とする資本主義において「自由な競争は社会善」です。では、「自由」や「競争」の原動力は何でしょうか? 「欲望」です。

「欲望」は無限に膨張します。縮むことはありません。なぜでしょうか? それを抱くのが人間だからです。「自由」と「競争」が不平等や格差を生んでも、「団結」に向けた動きが分断を生んでも、西側は、膨張する欲望によって形成されたパラドックスを引きずりながら、前進しているのです。

 では西側はいつ、欲望の扉を開いたのでしょうか? 18世紀の産業革命でしょう。それ以降、情報革命など革命は何度も起き、その度に西側の欲望膨張に拍車がかかりました。革命以外では、1970年代の兌換(だかん)停止が大きな意味を持ちました。膨張し続ける欲望に見合うだけの貨幣を、人為的に供給し続けることができるようになったためです。

・パラドックス(弱点)を鋭く突いたロシア
 東西関係なく、人間は誰しも心に「欲望」を飼っています。ただし、その扉が開いているかどうかは、きわめて大きな差です。「欲望」は、物事を俯瞰(ふかん)したり、地に足を着けて物事を進めたりすることを邪魔します。もしその扉を開けていないのであれば、こうした邪魔は生じないでしょう。当然、パラドックス(自己矛盾)も生じにくくなります。

 厳しい統制(反自由・反競争)を是とし、取り立てて豊かとはいえないロシアはある意味、欲望の扉を開けておらず、西側にはない強みを持っていると言えるでしょう。

 そのロシアは、西側がパラドックスに悩まされ、行動・思考が鈍くなっているタイミングを見計らい、インフレを加速させたり、西側にとっての弱点であるパラドックスを拡大させたりする意図を持ち、ウクライナに侵攻した可能性があると筆者は考えています。そうすることで、西側に効率的にダメージを与えることができるためです。

 実際、ロシアは今、直接的に欧州主要国や米国を攻撃はしていませんが、インフレや不安を振りまき、西側の政治や経済を強く揺さぶっています。これを攻撃と言わず何というのでしょうか。