ドルの基軸通貨体制も危ない⁉ポズサーが「ブレトンウッズIII」と呼ぶ新しい国際金融秩序

 米国も日本のことを言えたものではない。米スタンフォード大学のジョン・テイラー教授が開発した「テイラールール」によると、米国のFF(フェデラル・ファンド)金利は現在、9.81%が理論値だ。少なくとも現在の0.25%ではない。

 スタンフォード大学のテイラー教授は2017年のFRB(米連邦準備制度理事会)議長選出でパウエルFRB議長の有力対抗馬だった。著名投資家のマーク・ファーバーはテイラー教授と二度ほど会っており、その謙虚さと誠実さに感銘を受けたという。だから、「テイラー教授は一度もFRB理事になったことがない」そうだ。

「多くの意味で重要なのは、2008年の金融崩壊が決して終わっていなかったことである。実は何年にもわたり経済を損なう長期的な崩壊だったのだ。その原因となった問題は、ほとんど全く解決されないままだった。そして、この金融崩壊は、米国の民主的な機関のせいで、長期的な崩壊がさらに悪化したものだったのだ。米国は経済問題の処理をFRBに頼った。それはまた、酷い欠陥のあるツールに頼ることを意味していた。FRBの資金はすべて、米国で勝者と敗者の格差を広げてしまった。より不安定になるための基礎を築いたにすぎない。この脆弱な金融体制は新型コロナウイルスの感染拡大によって粉砕された。FRBはそれに対処するため、さらに多額の資金を新しく創造した。そして、それまでの歪みをさらに増幅させたのである」 

(クリストファー・レオナルド 『泡銭の支配者』(2022))

世界秩序の変化

これから(15)のフェイズへ…分散ポートフォリオで現金の劣化ヘッジを!
出所:『Principles for Dealing with THE CHANGING WORLD ORDER』(レイ・ダリオ)

 クレディ・スイスのゾルタン・ポズサーは、G7がロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシアの外貨準備を凍結した日に、現在の通貨体制は終焉(しゅうえん)を迎えたと述べている。「リスクフリーと考えられていたものがそうではなくなり、存在しなかった信用リスクがきわめて現実的な没収リスクに一瞬で置き換わった」のだ。

 ポズサーが「ブレトンウッズIII」と呼ぶ新しい国際金融秩序は、ペーパーマネーから実物資産への投資を加速させていくのであろうか? いずれにせよ、現在のドルを基軸通貨とする金融システムが弱体化していくなかで、インフレ率は上昇していくだろう。この辺の話は、今週の『先取りマーケットレビュー』をみていただきたい。

 近い将来、通貨インフレという詐欺的増税が到来するだろう。歴史的経験が何かを教示してくれるとすれば、それは私有財産が文明と密接に絡み合っていることだ。われわれは世の中の新しい現実に備えて、資産防衛の準備をするしかない。

 不確実性の時代を乗り切るには「分散」投資が必要だ。