米シェール「脱炭素」で開発鈍化

 以下のグラフは、米国のシェール主要地区における開発に関わる2つの指標(掘削済井戸数と仕上げ済井戸数)および、原油価格の推移を示しています。

 掘削済井戸数とは、リグ(掘削機)を稼働させて、掘り終えた井戸の数です。リグが原油を生産する機械のようにとらえられることがありますが、リグはあくまで穴掘り機です。

 仕上げ済井戸数とは、掘削した井戸に高圧で水や砂、少量の化学物質を注入し、井戸の末端で破砕させる、原油を抽出するための最終的な作業を終えた井戸の数です。仕上げを行わないと原油を生産することはできません。掘削を終え、あえて仕上げをしない井戸(後述する待機井戸)も存在します。

 グラフの通り、2020年春のコロナショック前までは、掘削済井戸数、仕上げ済井戸数、原油価格は、ほぼ連動していました(数カ月、原油価格が先行)。

 コロナショックでいずれも低下・減少した後、原油価格は大幅に回復しましたが、2つの開発関連指標は、2年が経過しようとしている現在でも回復途上のままです。

 2020年11月の米大統領選挙に向けて、バイデン氏が「脱炭素」を前面に打ち出したことが、石油開発の鈍化、引いてはシェール主要地区の原油生産量の回復鈍化のきっかけになり、この動きが現在も継続していると、考えられます。

図:米シェール主要地区の開発関連指標と原油価格

米シェール主要地区の開発関連指標は、EIAが提唱する7地区の合計

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 同地区の開発関連指標の動向は、数カ月先の原油生産量の動向に直接的に影響します。さらに同地区の別のデータに注目します。