原油市場の「2段構造」

 ここからは「【黎明期】の脱炭素」とともに、物価高の要因になっている原油高について考えます。図「黎明期の「脱炭素」とインフレ(物価高)」で示したとおり、原油高は直接的、同時に電力価格や流通コストを押し上げる間接的な物価高の要因です。

 図「昨年末来の国際商品価格の騰落率」のとおり、原油相場は昨年末来、13.2%上昇しています(15営業日で9.9ドル上昇 1日あたり60セント超上昇)。この間の価格推移は以下のとおりです。

図:原油価格の推移 単位:ドル/バレル

WTI原油先物 期近限月 60分足 終値(日時は日本時間)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 1月5日(水)、12日(水)の深夜は、EIA(米エネルギー情報局)が週次の石油統計で原油や石油製品の在庫を公表し、原油在庫の減少が目立ったことが確認され、米国国内の需給引き締まりが意識された時間帯です。

 また、1月10日(月)はカザフスタン、14日(金)はウクライナ、17日(月)はUAEを中心とした中東地域における情勢悪化により、石油の供給減少懸念が強まりました。こうした石油に関わりが深い地域の供給減少懸念は、時間帯(アジア、欧州、米国)の区別なく、原油相場を押し上げます。

 今年に入り、原油相場は、米国の石油需給の引き締まり(≒原油在庫減少)と、主要供給国やそれに関わりが深い地域の情勢悪化、同時に、先ほど述べた「【黎明期】の脱炭素」が、じわりと、中長期的な上昇圧力をかけている(上昇要因の2段構造)ことにより、上昇していると言えるでしょう。