2021年の中国実質GDP(国内総生産)成長率が8.1%だったという統計が、中国国家統計局から発表されました。新型コロナウイルス禍からのV字回復も作用したためこの数字自体は想定内で、肝心なのは今年どうなるかです。習近平(シー・ジンピン)国家主席率いる共産党指導部はこの数字、およびこれを受けた2022年の経済情勢をどう捉え、回していこうとしているのか。世界経済フォーラムによるオンライン形式の準備会合「ダボス・アジェンダ」で習氏が行った基調講演も参照しつつ、今回解説していきます。

2021年GDP8.1%成長が意味するもの

 中国国家統計局は17日、2021年10~12月の実質GDPが前年同期比4.0%増だったと発表しました。伸び率は7~9月の4.9%から鈍化し、結果、2021年通年の成長率は8.1%となりました。同局の寧吉喆(ニン・ジージャー)局長は同日記者会見にて、「2021年、我が国経済は持続的、安定的に回復し、経済成長と新型コロナ抑制は世界をリードしている。主要な指標は市場の期待を達成するものであった」と評価しています。

 一方で、次のようにも指摘しています。

「同時に、外部環境はより一層複雑、深刻、不確定になっている現実も見なければならない。国内経済は需要の縮小、供給の制約、見通し悪化という三重圧力に直面している」

 ポジティブ、ネガティブな側面を含め、基本的に2021年12月に開催された中央経済工作会議での審議を踏襲していると言えます。今回の統計結果を受けて、党指導部の中で経済情勢や政策への認識が変化したわけではないということです。それらは、3月に開催予定の全国人民代表大会(全人代)へと持ち越されることでしょう。

 最近の中国経済「低迷」を議論する際、その引き金として支柱産業の一つである不動産業界への規制強化、経済活動を犠牲にしてまでも感染拡大を徹底的に抑え込もうとする「ゼロコロナ」を挙げる見方はしばしばあります。私自身、それらの要素は軽視できないと考えています。

 例として、中国政府が経済成長にとって最大の原動力だと胸を張る消費動向をみてみましょう。2021年のスーパーやEC(電子商取引)などの売り上げを合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は前年比12.5%増(2年平均3.9%増)でしたが、1~9月の前年同期比増加率16.4%増と比べると、成長は鈍化しています。

 また、雇用も社会の安定という観点から中国政府が特に重視する統計です。2021年、都市部の新規雇用数は1,269万人で、前年より7%増えましたが、1,300万人を超えていたコロナ前を下回っています。

 逆に、外需は好調でした。2021年は前年比で21.4%増(輸出21.2%増、輸入21.5%増)となっています。寧局長の紹介によると、2021年、消費、投資、輸出の成長率への寄与度はそれぞれ5.3、1.1、1.7(第四四半期は3.4、▲0.5、1.0)となり、外需の比重が高まっているのが分かります。投資の低迷が顕著に見られますが、党指導部は、2022年の経済政策として、財政出動、特にインフラ投資の強化を掲げており、その動向に注目です。

 近年の中国経済の特徴として、「国内大循環」という国家戦略にも体現されるように、内需重視が挙げられます。一方、上段の数字に見られるように、直近ではむしろ外需依存が強くなっている。「そうではないんだ」と言わんばかりに、寧局長は会見にて、2021年の小売売上高総額が前年比12.5%増の40兆元を超え、固定資産投資が同4.9%増の50兆元を超え、内需の経済成長への貢献率が前年比4.4ポイント増の79.1%となったことを強調。「経済成長はやはり内需によるものが主である」と主張しています。

 私自身は、関連産業も含めるとGDPの2~3割を占めるとされる不動産業界は、今年重視するインフラ投資や財政出動を含め、引き続き重視されるとみています。地域によって一部引き締め策も打ち出されるでしょうが、全体としては、不動産業界が経済成長に大いに寄与すべく、アクセルとブレーキを臨機応変に踏んでいくでしょう。

 問題はやはり新型コロナ対策です。感染力は強いが重症化リスクは低いとされる変異株オミクロン型が主流になろうという大勢において、経済活動を犠牲にしてでも感染拡大を完全に食い止めようとする「ゼロコロナ」が果たして功を奏するのか否か。最近、日本の機関投資家さんと議論をしていても、「中国政府はいつゼロコロナからウィズコロナに転換するのか?」という質問を頂きます。

 私の見方としては、党指導部は、コロナ抑制と経済成長はどちらかを取るというトレードオフの関係ではなく、両立させる以外に道はないという現実をよく理解しています。実際に、現地の知人らによれば、年末年始以降、陝西省西安市や河南省安陽市で実施されたロックダウンでも、当時の武漢に比べれば臨機応変で、段階的に一定の経済活動を許可する柔軟な対策になってきているようです。中国がコロナの完全抑え込みだけでなく、経済とコロナの両立でも「成功」を収められるのかどうか。動向を注視していきたいところです。