イラン要因は相場にマイナスの影響の公算大

 もう1点注意すべきはイランの動向だろう。2015年にオバマ政権主導で、米国、英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアの6カ国とイランとで核合意が結ばれた。イランがウラン濃縮活動を大幅に縮小するのと引き換えに、欧米などはイランに対する原油禁輸や金融制裁を解除した。その結果、イランの原油生産量は日量300万バレル台後半で推移していた。しかし、トランプ前大統領が2018年に核合意からの離脱を表明、対イラン制裁を再発動したため、2018年以降のイランの産油量は落ち込んだままである。

イランの原油生産量(100万バレル/日)

(EIAのデータを基にクリークス作成)

 一昨年の選挙戦で当時のバイデン候補はイラン核合意復帰を公約、そして大統領に就任した。穏健派であるイランのロウハニ大統領も、米国が制裁を解除すれば20%のウラン濃縮をやめると表明。これによりイランからの供給回復への期待が高まる場面もあった。核合意の再建協議は昨年4月に始まったが、6月のイラン大統領選で強硬派のライシ師が当選したため協議は中断、11月末から7回目の間接協議が再開されたところである。米国の核合意復帰、そして経済制裁解除への道のりは険しいが、協議が進展しないこと、イランからの供給が制限され続けることはすでに市場に織り込み済み。むしろ進展があって制裁解除ともなれば、市場に100万バレル以上の原油供給が再開されることは必至であり、先の米国などの主要産油国の生産増加を踏まえると、供給過剰に拍車をかける可能性があることから、ネガティブサプライズになりやすい。

 また、イランは来年3月までに原油生産能力を日量400万バレルまで引き上げる予定を明らかにしている。これは2018年に制裁が課される前以上の水準で、昨年末の同国の産油量と比較すると日量150万バレル近くの供給増加となる。能力拡大計画も、制裁が課せられている状況下ではなかなか市場への供給増加にはつながらないが、ガス田から液体分として採取される原油の一種のコンデンセートなどの輸出はここ数カ月増加している模様で、中国向けなどに水面下で輸出が増える可能性もある。