長期の資

産形成は「未来を二人でつくる」ビジョンの共有

 お金の問題でパートナーを説得することは、単なる税制優遇の理解にとどまりません。むしろ長期的な資産形成のビジョンを共有するほうが重要です。

 ですから、「いくら貯まる」というテーマより、むしろ「それで何ができるか」のほうに説明の重点を置くといいでしょう。

 例えば、家を買うときのお金の問題を考えてみます。「いくら返済するか」という議論はもちろんですが「この広さの家がこのロケーションで手に入り、そこで新生活が送れる」というビジョンが明確であり、ポジティブな夢であるからこそ、大きな借金であっても意見はまとまりやすいわけです。

 そこを「住宅ローン減税が終了するかもしれないから」という理由を前面に押し出してローン設定を決断しようとすれば、パートナーも「焦らないほうがいいのでは?」と躊躇(ちゅうちょ)するでしょう。iDeCoやNISAの理解を得るのも同じです。

「よく分からないと思うけど、とにかく口座を作るからここにはんこ押して」という方法は使わず、老後の夢を少し語ることをお勧めします。

 iDeCoやNISAで長期資産形成をするのは、多くの場合は老後のためを考えてのことでしょうから、引退後を見据えて「住む場所などの生活スタイル」「趣味や娯楽などチャレンジしてみたい夢」を語り合ってみましょう。

「老後に2,000万円」問題の話をしてもいいですが、誤解に基づく説明ではなく「老後を豊かにする財産は自分たちでつくる」ことを理解してもらいましょう。ふたりが手にする退職金に加え、それ以上の厚みを確保することが楽しいセカンドライフに必要だということです。

「100歳人生時代」というようなキーワードもいいですが、こちらも「長生きするからたくさん備える必要がある」と切り出すと、長生きをマイナスで考える発想法に陥りがちなので話の持ち出し方は注意が必要です。

 いずれにせよ、ダブルiDeCo、ダブルNISAを夫婦で考えることは資産形成の強力なエンジンになる一方、なんとなくでは済ませられないことです。

 ぜひ、未来の夢やビジョンを話し合ってみてください。きっと苦労するだけの価値はあるはずです。