日本のデジタル化の現状は?

 このようなデジタルおよびオンラインの分野は、市場や利用者の規模および購買力などのさまざまな要因によってその成長速度や成長規模が異なってきます。しかし、まず必要なのは、デジタルサービスが提供されるための基本的な施設や設備、いわゆるデジタル・インフラであると言えるでしょう。

 デジタル・インフラの充実度を測定する方法として、有線およびモバイルのネット接続速度があります。2020年の速度ランキングにおける日本の接続速度は、モバイルで35位、有線で19位と世界平均を上回っています。

 一方、スイスIMD(国際経営開発研究所)が発表している国ごとのデジタル競争力のランキングでは、日本は2019年23位、2020年27位と、多くの国の後塵を拝しているのです。

 発表された報告書の詳細を見てみると、日本は技術面では優れているものの政府の政策や金融市場サポートの面で大きく順位を落としていることが分かります。つまり、デジタル技術そのものは持っていますが、それを活用する市場環境や政策支援の面が足りないと指摘しているわけです。

 アナログ時代では世界の最先端を誇っていた日本が、逆にデジタル時代の到来でアナログからの脱皮が遅れたとも言えます。

スタート時点の日本、これからの対応と変化は?

 日本もようやくデジタル技術の活用に本腰を入れ始め、今年9月に「デジタル庁」が正式に発足されました。各省庁へ分散されていたITおよびデジタルに関わるさまざまな分野をまとめて管理できるようになり、各種政策の企画や推進などが本格的に動くと予想されます。

 日本政府はその他にもIT基本法やデジタル・ガバメント計画など、DXに関連した政策を真剣に検討しており、本格的なデジタルへの移行を図ろうとしています。スイスIMDでも指摘されたように、政策支援や市場環境が少しでも改善されたら、日本のデジタル競争力は一気に高まる可能性もあるのです。

 このようなデジタル・イノベーションの大きな流れは、最近の日本株式市場でも動きが明確になってきています。下記チャートの赤ボックスのテーマ指数は、デジタル・トランスフォーメーションに直結する3つの指数(デジタル・イノベーション、eコマース、ゲーム・アニメ)です。

 それらの直近1~2年間の動きを見ると、市場全体はもちろん、東証産業分類上の「IT及びそのサービス」よりも好実績を挙げています。

 つまり、世界レベルで比較した日本のデジタル競争力が遅れているのは事実ですが、最近では日本でもデジタル・イノベーションの流れが本格的にスタートしており、今後は「遅れているからこそ、これからの成長余地が大きい」と言えるのではないでしょうか。

 では、該当テーマのデジタル変化ついてもう少し詳しく見ていきます。

出所:Bloomberg、算出期間:2016年5月~2021年9月、2016年5月を100として指数化