デジタル・トランスフォーメーション(DX)で変わる世界

 最近、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」という言葉をよく耳にすると思います。デジタル・トランスフォーメーションは、「デジタルによる効率・能率の改善(イノベーション)があらゆる生活の面で変化をもたらす」という意味であり、「DX」と略されます。現在は参考図のように第2段階から第3段階への移行期、すなわちデジタルによるトランスフォーメーションが起こっている時期、と言われています。

 既にデジタル・トランスフォーメーションが起こった代表的な分野は、ソーシャル・ネットワークやショッピングの利用、ゲームやアニメーション、音楽などのコンテンツ消費など、先行してオンラインの取り入れが進んだ分野です。

 FAANG(ファング:フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグルの頭文字)と称される世界のデジタル・オンライン各分野をリードする5社は、デジタル技術の発展によってオンラインをうまく活用し、利用者を爆発的に増加させて大きく成長しました。

 この5社の時価総額を合計すると800兆円を超え、日本の株式市場全体の規模を超えています。デジタルを武器にした新しい企業が、既存産業の規模を超えて躍進する時代が、いよいよ本格的に到来しているのです。

出所:Bloomberg、Global X Japan、2012年5月~2021年9月、2012年5月17日を100として指数化、時価総額基準は2021年9月30日、1米ドル=113.3円

日本のデジタル化の現状は?

 このようなデジタルおよびオンラインの分野は、市場や利用者の規模および購買力などのさまざまな要因によってその成長速度や成長規模が異なってきます。しかし、まず必要なのは、デジタルサービスが提供されるための基本的な施設や設備、いわゆるデジタル・インフラであると言えるでしょう。

 デジタル・インフラの充実度を測定する方法として、有線およびモバイルのネット接続速度があります。2020年の速度ランキングにおける日本の接続速度は、モバイルで35位、有線で19位と世界平均を上回っています。

 一方、スイスIMD(国際経営開発研究所)が発表している国ごとのデジタル競争力のランキングでは、日本は2019年23位、2020年27位と、多くの国の後塵を拝しているのです。

 発表された報告書の詳細を見てみると、日本は技術面では優れているものの政府の政策や金融市場サポートの面で大きく順位を落としていることが分かります。つまり、デジタル技術そのものは持っていますが、それを活用する市場環境や政策支援の面が足りないと指摘しているわけです。

 アナログ時代では世界の最先端を誇っていた日本が、逆にデジタル時代の到来でアナログからの脱皮が遅れたとも言えます。

スタート時点の日本、これからの対応と変化は?

 日本もようやくデジタル技術の活用に本腰を入れ始め、今年9月に「デジタル庁」が正式に発足されました。各省庁へ分散されていたITおよびデジタルに関わるさまざまな分野をまとめて管理できるようになり、各種政策の企画や推進などが本格的に動くと予想されます。

 日本政府はその他にもIT基本法やデジタル・ガバメント計画など、DXに関連した政策を真剣に検討しており、本格的なデジタルへの移行を図ろうとしています。スイスIMDでも指摘されたように、政策支援や市場環境が少しでも改善されたら、日本のデジタル競争力は一気に高まる可能性もあるのです。

 このようなデジタル・イノベーションの大きな流れは、最近の日本株式市場でも動きが明確になってきています。下記チャートの赤ボックスのテーマ指数は、デジタル・トランスフォーメーションに直結する3つの指数(デジタル・イノベーション、eコマース、ゲーム・アニメ)です。

 それらの直近1~2年間の動きを見ると、市場全体はもちろん、東証産業分類上の「IT及びそのサービス」よりも好実績を挙げています。

 つまり、世界レベルで比較した日本のデジタル競争力が遅れているのは事実ですが、最近では日本でもデジタル・イノベーションの流れが本格的にスタートしており、今後は「遅れているからこそ、これからの成長余地が大きい」と言えるのではないでしょうか。

 では、該当テーマのデジタル変化ついてもう少し詳しく見ていきます。

出所:Bloomberg、算出期間:2016年5月~2021年9月、2016年5月を100として指数化

先行して動き出したテーマ:eコマース、ゲーム・アニメーション

 まずはeコマースです。下のEC化率(全体の取引における電子取引の比率)のチャートをみると、日本は世界平均(18%)の半分程度とかなり低い水準にあります。

 ただ、今の水準に至るまでの推移を見ると成長スピードはかなり速いことが分かります。つまり、遅れた分成長余地は大きい、と言えるのです。

出所:経済産業省 2020年電子商取引に関する市場調査, 英国・韓国のEC化率はGlobal X集計

 また、オンライン取引を行うためには、クレジット・カードや電子マネーなどのキャッシュレス決済が必須であり、eコマースの成長には欠かせない存在です。上記のEC化率と同様に、日本におけるキャッシュレス決済の比率はかなり低い水準ですが、比率の推移をみると急速に上昇しています。

 キャッシュレス技術はeコマース成長のためのインフラの一つで、このように成長する分野はキャッシュレス以外にもオンライン・セキュリティや物流施設や設備など複数存在し、それらを1つのポートフォリオで束ねるのがテーマ選定のキーポイントとなります。

出所:キャッシュレス・ロードマップ2021、⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会(経済産業省傘下)

 デジタル変化で恩恵を強く受けるもう1つのテーマはゲーム関連です。ゲーム産業は大きくモバイル・コンソール・PCの3つに分類されます。

 下記チャートのセグメント別の規模推移をみると、モバイルゲームの成長性が最も著しいです。これはスマートフォンの普及および利用時間の急激な成長によるもので、日本の場合は他国と比べ両方とも成長の余地が大きく、モバイルゲームのさらなる成長が期待されます。

 また、コンソールゲームもモバイルゲームの成長性には及ばないものの堅調に拡大しています。ゲームソフトの流通がパッケージ流通からデジタル流通、すなわちダウンロードやクラウドなどへ急激に変化し、市場全体の規模拡大と共に利益率の改善が見られています。

 コンソールゲームは日本が世界で競争力を持っている分野であり、デジタルによる変化でテーマ関連の会社は成長を続けると期待されます。

出所:Statista, Global X Japan. 1米ドル=109.44円(2021/4/12), 総務省(日本スマホ利用), Capcom/Statista(コンソールのソフト流通)

 今回はデジタルの変化によって注目を浴びているデジタル関連テーマを調べてみました。繰り返しになりますが、日本でのデジタル・トランスフォーメーションはまだ黎明(れいめい)期と言えます。日本の変化はもちろん、世界的な競争力を持つ企業の誕生を楽しみにしています。

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