Q:インデックス投資家です。実は、インデックス投資と世界の環境問題の関係が気になっています。環境問題を解決するには資本主義を捨てなければならないという主張を聞くこともあります。また、インデックス投資では、環境に悪影響を与えている企業にも投資して資金を提供していることになりますが、いいのでしょうか?

A:(実質的に、複数の質問です。これも時々悩む人がいます)

 先ず、資本家はそれなりに強欲で、彼らのビジネスが環境を破壊することもありますが、儲からないビジネスには投資しません。環境が制約になって儲からなくなれば、投資を縮小するでしょうし、経済活動や投資が縮小する中でも、資本主義的なシステム(自由に売買される商品によって商品が作られ、生産手段も所有と売買が可能なシステム)は存続可能です。その場合、資本への投資にはリスク・プレミアムが期待できるように、資本がプライシングされつつ、資本の量が調節されます。

 私の印象では、この点が盲点になっている論者が少なくありません。

 環境が制約になって、低成長に陥ることは資本主義にとって案外心配ありません。むしろ、環境をどのように「制約」として機能させるかが問題でしょう。例えば、「炭素税」のような仕組みが早く世界規模で機能するようになるといい。

 環境破壊企業への投資は、先ず問題を程度の問題として理解する必要がありそうです。いかなる企業も、なにがしか環境に負荷を掛けている。「投資対象から外す」という適当な線引きは設定しようがないし、そうすることは、投資のパフォーマンスを悪化させる要因にもなり得る。他人のお金を預かって最善の運用を行うべき、年金運用などでは、やってはいけない投資行動です。

 加えて、環境問題劣等生企業の株主になることが悪いわけでもない。環境優等生が頑張るよりも、劣等生が改心して頑張ることの効果の方が大きいかも知れない。株主として、プレッシャーを掛けることは悪くない。優等生と劣等生のどちらに投資するのがいいとも言いがたい。例えば、劣等生企業に投資して、株主として、環境対応への改善を促すのもいいことであり、優等生企業に投資して満足しているよりも世の中のためになる。

 結局、環境問題を、企業や政府、ひいては個人に対して、どのようにして有効に「制約」として機能させるかを考えることが重要でしょう。

「資産運用ではインデックス投資家です。一方、環境問題には大いに積極的で行動の用意があります」という人がいるとすると、大変良き市民のような気がします。インデックス投資家は、安心して下さい。

Q:そもそも、株式投資に高いリターンが期待できるのはなぜなのですか?

A:(本質的な質問が来ました!)

 それは、投資家が資本を提供する時に、リスク負担に対する利益を要求し、その要求を反映して株価が形成される際にリスク・プレミアムが織り込まれるからです。

 株式が世の中のためになっているからとか、経済が拡大するからとか、企業が頑張るから、といった、ある意味ではロマンチックな理由からではなく、将来不確実な価値を、現在時点で評価する際の経済主体の考え方が反映したものです。

 加えて、市場で取引することを考えると、市場の参加者である投資家は、他の参加者が想定している割引率(同時に、期待リターン)を想像する必要があります。お互いに、他人の割引率を推測するような相互作用とこれを反映した株価形成を通じて、株式のリターンが形成されると考えられます。

 投資家の「リスクを嫌う心理」と「市場で形成される株価の原理」の2つが株式投資のリターンの源泉です。

 投資家にとって頼りであり期待すべきなのは、「市場の価格形成の神秘!」(と呼んでみることにしましょうか)です。