信用取引はしない。優待メインの「農業的投資」は初心者向き

「私はアベノミクスの株価上昇が始まった直後の2012年12月に信用取引をやめました。翌年、アベノミクスでもうけた人・もうけ損ねた人という雑誌の企画で後者の代表に取り上げられたことで、新聞社が主催するパネルディスカッションに呼ばれ、取材や講演のお話をいただくようになりました。でもね、私はもうけ損ねた人で良かったと思っています。信用取引をやらなくなったおかげで、日々の株価の値動きが気にならなくなったし、大損して金策に走らなくても良くなったからです」

 桐谷さんは信用取引を批判しているわけではありません。

「私の性格のせいなんです。平均株価が上昇すると含み益が増える。さらに信用の買いポジションを増やす。もっと含み益が増える。(後で思えば)株価が天井付近で売ってたくさんの現金を手にする。現金で持っていても利息が付かないので、再び株式に投資する。天井付近で再び買うから、その後の暴落で大損するわけです。バブル崩壊後に信用取引の損失が膨らんだ話をしましたが、その時は本業の将棋に集中できず、給料に関係する順位戦で10戦10敗してしまいました」

 株を長期保有して配当と優待品を受け取る投資法に転換してからは「心穏やかな生活」が続いているそうです。

「信用取引や短期売買のように利益を狙う投資法は狩猟のようなもの。一発で猛獣を仕留められればいいのですが、失敗すると私のようにあちらこちらかまれて痛い目に遭う。優待投資は農業のようなもの。種をまけば1年に1回か2回、優待品という収穫が得られます。優待生活に切り替えた今は、どんな暴落が起こっても気になりません。これから株式投資を始める初心者の方には、特にお勧めしたいですね」

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