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 バイデン大統領は4月、「米国における一世代に一度の投資」と銘打って、大インフラ投資計画を発表しました。1950年代の州間高速道路システムの建設以来、過去70年間で最大規模の計画になります。

 バイデン大統領のインフラ投資計画は、橋や道路の建設といった「オールド・エコノミー」だけではなく、水道管交換や高速ブロードバンドなどの整備や人工知能(AI)など研究開発投資に、防衛関連以外としては過去最大の投資金額を見込んでいます。

 バイデン大統領は「インフラ計画は中国との競争で不可欠」であると強調。インフラ計画には、中国からの部品供給の依存度を下げるために、半導体のサプライチェーン(供給網)強化も盛り込まれています。

 バイデン政権が中国との対立姿勢を明確にしたことは、地政学的にも重要です。両国の緊張関係はトランプ前大統領時代よりも、高まったとも考えられます。

 米上院は10日、超党派によるインフラ投資法案を賛成69、反対30の賛成多数で可決しました。投資計画は、当初案から半分以下の1兆ドル規模まで縮小されました。しかし金額よりも、民主党と共和党が協力する「超党派」の合意であることに意義がありました。バイデン大統領はこの投資計画を、トランプ前大統領によって分断されたアメリカ政治を修復する象徴にしたい考えがあったからです。

 上院は、社会福祉や気候変動などに対応した3.5兆ドル規模の財政支出法案についても、審議入りを承認。下院は夏季休暇を早めに切り上げ、23日の週から議会に戻ります。下院で可決されると、予算案は上院に戻されますが、共和党からの反対が予想され、成立できるかどうかは不透明。そこで民主党は財政調整措置(リコンシリエーション)と呼ばれる特別な仕組みを使い、共和党の賛成がなくても可決する考えです。

「財政調整措置」とは、上院の多数派が、優先順位が高いと見なす法案を強引に通過させるための仕組み。財政調整措置を用いると単純過半数での採決が可能になります。つまり民主党は50人と議長のハリス副大統領の1票で事足りることになります。

 バイデン・インフラ投資計画に対するマーケットの関心はいまひとつのようです。景気刺激策のような即効性がないせいかもしれません。しかし金額の巨大さを考えるなら、9月以降の米10年債利回りとドルの方向に少なからぬインパクトを与えることになるでしょう。