売買代金ランキング(5銘柄)

1 QDレーザー(6613・東証マザーズ)

 網膜走査型レーザーアイウエアなどを手掛ける2月IPO。初値が797円(公開価格340円)と買い易かったこと、新奇性のあるビジネスモデル(かつ赤字)のベンチャーで、適正価格を付けにくいこと―などから、値段無視のムードで想像以上の人気に発展しました。ただ、3月IPOが続々と出てくる手前(月前半)こそ高い流動性を維持したものの、月後半にかけて売買代金は激減。短期マネーは新しく登場するIPOへ目移りし、同社に対する人気が離散するなか、株価水準も切り下げていきました

 3月に売買が盛り上がったのは17日。前日16日に一部経済紙で、同社の半導体レーザー技術について紹介。記事内では、同社技術でメガネブランドの「Zoff」を手掛けるインターメスティックとメガネ型のスマートグラスを共同開発していることなどが取り上げられました。

2 BASE(4477・東証マザーズ)

 米長期金利上昇でグロース株が売られる地合いのなか、流動性の高い同社株などはヘッジファンドの空売り対象にもなった面もありそう。水準切り下げが続くなかで、前月10日の決算発表時に「3月末に株式5分割」をするとも発表。その翌日出来高が急増したのですが、分割後の上昇を期待して買った投資家が、3月は終始含み損状態でした。ここで気掛かりなのは、株式分割後です。

 株式分割をすると、最低投資金額が下がって買いやすくなるため「流動性が高まる」とされます。ただしこれは、従来の流動性が低かった銘柄の場合…。同社の場合は、従来の流動性が新興株トップ級。その銘柄が5分割し、1,000円台の手頃の株価になったことはプラスなのか?…その答えは中長期で明らかになることですが、初期反応としては明らかにマイナスでした。5分割した30日、売買代金は前日比48%減の36.8億円に激減し、同社株として今年最低に。値がさでスケール感のあるマザーズ銘柄として、活発に出入りしていたヘッジファンドのフローが落ちたのではないか? と想像させられる事例といえます。

3 メルカリ(4385・東証マザーズ)

 月が替わった直後、2日に急伸。ただしその後は、米長期金利の上昇によるグロース株売り地合いが逆風となり、月末まで上値の重い展開が続きました。2日に急伸した際の材料は、1日に発表した中国のEC大手アリババグループとの提携でした。

 アリババが手掛ける個人間取引サイト「タオバオ」やフリマサイト「シェンユー」と連携できるメリットは絶大との見方があるようです。というのが、「タオバオ」が中国の巨大EC市場でトップ、「シェンユー」もフリマアプリとして中国トップであるため。この2サイトと連携し、メルカリの出品商品の一部がサイト上に表示され、閲覧・購入が可能になるわけで…“越境販売”という新たな成長カタリストが付いたといえます。

4 シンバイオ製薬(4582・ジャスダック)

 今年に入って急騰していた創薬ベンチャー(昨年末の終値379円→3月24日高値1,713円)。手掛かりとなってきたのは、エーザイに販売委託していた抗がん剤「トレアキシン」の契約満了で、自社販売体制に移行することによる売上急増でした。前月に発表した本決算でも、今期黒字転換、中計の最終年度2023年12月期には営業利益20.9億円を見込むとしています。

 そんなシンバイオは、3月も高値を一段切り上げ。11日に小児向けのアデノウイルス感染症を対象とした抗ウイルス薬がフェーズ2試験に向け前進していることを発表したことなどが材料に。ただし24日、東証が同社株を上場廃止に係る猶予期間入りすると発表したことでトレンドは反転。東証のルールに沿った発表(4事業年度で営業損益が赤字など)であって、上場廃止リスクが高まったとは言えないのですが…手前で信用買い残も急増していたこともあって、逆流し始めると売り圧力は強く、まさに“往って来い”に。

5 フリー(4478・東証マザーズ)

 新株予約権を使った資金調達(MSワラント)を発表する企業がかなり増えていますが、同社は通常の公募増資・売出による資金調達を22日に発表しています。海外募集としていますので、フリー株に関しては、海外投資家から引き合いがあるということを意味していそうです(流動性も高いですし)。最大で発行済み株数の9%超の新株発行となり、希薄化を嫌って株価は急落しました(発表日終値9,660円→25日安値7,970円)。

 ただ、25日に公募売出の価格が8,002円に決定すると、翌日から急反発。価格決定に向けて、つなぎ目的で空売りしていた分の一部買戻しなどが入ったものと見られます。あとは今回、9%の希薄化で350億円もの資金調達に成功したのは大きいともいえます。この調達資金を元手としたM&A(買収や合併)など成長投資に期待されます。