供給不安には3つの型がある。今回の供給不安は“川中型”

 原油や貴金属、穀物などの資源や一次産品などと呼ばれるものが生産者の手を離れ、ガソリンや指輪、パスタなどの最終商品となって消費者の手に届くまでの流れを、川の流れに例え、川上・川中・川下と、表現することがあります。

図:川上・川中・川下のイメージ
 

出所:筆者作成

 上図の通り、今回のスエズ運河での事故は“川中”で発生した出来事であることが分かります。今回の供給不安は、油田の爆発や鉱山労働者のストライキ、天候不順による不作などをきっかけとした供給不安ではありません。また、中国の旺盛な需要やイベントやブームを背景とした需要増加をきっかけとした供給不安でもありません。

 川中部門での障害は、川上部門での“モノ余り”と川下部門での“モノ不足”を同時に引き起こします。今回のスエズ運河の件で、例えばサウジなどの主要産油国で“モノ余り”が起こったり(下落要因)、オランダのロッテルダム港周辺で石油製品の在庫が減少したりする可能性がある(上昇要因)、ということです。

 高い変動率を伴ったレンジ相場が発生したのは、同時に発生した上昇要因と下落要因に市場がどう反応すればよいか決めあぐねたことが一因に挙げられると、筆者は考えています。