“価格下落”が積立を有利に。最終的な取引価格に注意

 価格と月ごとの保有数量の関係から、積立取引を効率化させるための大きな要素の一つが“価格が下がること”であることがわかります。ある意味、積立取引においては、価格が下がることが、投資家を有利にしている、と言えます。

 先述の図「上記3パターンの評価額の推移」のとおり、[3]“低位安定”の後半5年間の評価額が急激に向上したのは、前半5年間の価格下落時に効率よく累積保有数量が増加していたためです。

“数量”以外に挙げられる、積立取引の大きな留意点は、“最終的に取引を終える時の価格”です。

 積立投資を開始し、価格が下落した場合、最終的に取引を終える時の価格は、一定程度、回復している必要があります([3]“低位から反発”の例)。また、積立投資を開始し、価格が上昇続けた場合、最終的に取引を終える時の価格は、さらに価格水準を切り上げていなければなりません([1]“高値維持”の例)。

 純金積立を含め、積立取引は“価格下落は有利だが、最終的な取引価格は一定水準が必要”と言えます。一方的な価格上昇は、累積保有数量が伸びにくいこと、最終的な取引価格がさらに高水準でなければならないことを考えれば、強くは望まれないでしょう。

 前回、そして今回の冒頭で、アドラー心理学の考え方を用い、過去の常識を遠ざけ、できるだけ“今”にフォーカスし、6つのテーマを俯瞰することが重要だと述べました。

 また、6つのうち、長期的なテーマである “中国・インドの宝飾需要”、“中央銀行”、“鉱山会社”の3つに注目し、大局観を把握することが重要だと述べました。

 冒頭の図のとおり、超長期的に見て、長期的な3つのテーマが作用して、金相場には一定の上限と一定の下限があると筆者は考えています。その意味では、純金積立にあたり、際限なく上値を追い続けるケース(本欄の[1]“高値維持”のようなケース)や、急落して価格が戻らない(本欄の[3]“低位から反発”の、反発が起きないケース)ケースが起きる可能性は、超長期的に見て、低いのではないかと、考えています。

上がる(騰がる)ことが正義とみなされやすい株式ではない、複数のテーマ起因の一定の上限と下限が存在し得る金(ゴールド)は、累積保有数量を効率的に増加させる価格下落も、最終取引価格を有利にする価格上昇も、発生し得る、積立取引に向いている投資対象だと、筆者は思います。本レポートが長期的な資産形成に役立ちましたら、幸いです。

[参考]楽天証券の純金積立の紹介

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