頻度が多くても時間分散にならないわけ

 では、なぜ購入頻度は最終リターンに大きく影響しないのでしょうか。ここからは、やや専門的な話になりますので、興味のある方だけ読み進めてください。

 積立投資における平均買付単価は、「調和平均」によって求められます。「調和平均」とは、いわゆる「平均」の一種で、往復の平均速度などを算出する際に用います。

 一般的な算術平均が、対象となるデータ値を足してデータ数で割るのに対し、調和平均は、対象となるデータの逆数を足してデータ数で割り、さらにその逆数を取るという方法で算出されます。投資信託の基準価額は、「1万口あたりの評価額」なので、平均買付単価を求める際は、算術平均ではなく、この調和平均を使います。

 例えば、1万口あたりの基準価額が当月1万円、翌月1万3,000円、翌々月1万2,000円の投資信託を積み立てた場合、平均買付単価は、いわゆる一般的な算術平均(対象となるデータ値を足してデータ数で割る)の1万1,667円ではなく、1万1,527円になります。

 調和平均には、算術平均よりも値が小さくなるという特徴があるほか、データ数が多くても、そのデータ群の散らばり度合によっては、一定の値に収束するという性質があります。

 投資信託の基準価額は不規則に変動するため、購入回数を増やしても、平均買付単価にさほど影響が表れないのです。このような調和平均の特徴ゆえ、前述の積立効果の検証を先進国株式以外の国内株式や新興国株式で行ったとしても、おおむね同じ結果になります。

 見慣れない数式や数値に違和感を抱くかもしれませんが、「積立投資の頻度を上げても、最終的なリターンに大きな差は生まれない」という結論だけを覚えておけば、基本的には問題ありません。