2月に注目したい新興株の動き

 2月の新興市場全体でいえば、ミクロで注目すべきは「決算発表」になります。マザーズ銘柄の決算発表は「2月10日~12日」に集中しますが、中でも、市場影響が大きいのは大型の人気銘柄になります。これらが、好決算を出して、株価も上がってくれたらいいわけですが、そんな理想通りに展開することなど滅多にないわけで…。

 何といっても、昨年のコロナラリーで、説明しようがないほど高バリュエーション化したグロース株が続出しました。予想PERで数百倍になり、表現しようがないため、「売上の何倍の時価総額が付いているか?」を測る予想PSR(株価売上高倍率)でざっくり判断するというような風潮が日米で当たり前になりました(過去では、赤字の創薬ベンチャーの規模感を知るのに使われていた程度でしたが)。

 かつては、PSR20倍を超えると高過ぎる、と言われていましたが…今やJTOWERの60倍台、フリーの40倍台など、コロナラリー前には存在しなかった高PSRの大型マザーズ株が存在します。これらが、今回の決算シーズンで、失望につながらないか?は警戒したいところ。参考になるのは、先月のマクアケでしょう。第1四半期の売上/利益項目とも“前年同期比”で大幅に伸びたものの、発表翌日は14%も株価が急落しました。嫌気されたのは、“前四半期比”で売上の伸びが鈍化した点。PSRで評価されている銘柄の判定基準は、「前四半期に比べて売上が大きく伸びているか?」になりそうです。

 マザーズ指数のウエイト上位10銘柄で、予想PSRが20倍を超えている銘柄でいえば、2月10日発表では中間決算のフリー(4478)、本決算のBASE(4477)が重要銘柄。12日発表では第3四半期決算のラクス(3923)、本決算のメドレー(4480)も注目されそう。また、12月IPOで指数ウエイトが1.5%を超えているのはウェルスナビ(7342)、プレイド(4165)の2銘柄ですが、ともに12日に上場後最初の決算発表を予定しています。決算で市場全体が動くとすれば、10日と12日発表のこれら銘柄がカギを握るはずです。

 そして、新興市場全体にとってマクロで注目すべきは、1月に続き「米長期金利」になります。足元の金利上昇は、ワクチン接種の拡大による経済正常化(その先にテーパリング)を織り込んでいるように見えます。世界の先頭に立ってワクチン接種を推し進めるイスラエル(人口900万人のうち3割超が1回以上ワクチンを打っている)では、2回接種した人の1週間経過後のコロナ陽性率が0.01%だったというデータが出ました。2月1日時点で、世界全体ですでに1億回のワクチン投与が行われているとも報じられています。

 その中で、ワクチン接種で先進国周回遅れの日本も、(ようやく)医療従事者から「2月中旬」にも接種を始める意向を菅首相が示しました。ワクチン接種の開始が伝わることを先取り、2月に入るとアフターコロナ株(GoTo関連株、インバウンド関連株など)が急騰し始めています。ワクチン期待で金利が上がり、これまで売られてきた割安株(バリュー株)が上がる…これまでの逆流ですので、これまで買われてきたDX関連株とか在宅特需のEC関連株など新興グロース株には資金が向かいにくい可能性があります。

 個人投資家の逆張りの買いが入っても、長期で保有する機関投資家の資金が入らないと高値圏で株価が定着しにくいのは新興株でも同じ。ワクチンの接種に関するニュースが出てくるにつれ、「アフターコロナ株のウエイトを落とし過ぎていた」とか「空売りしていた分は買い戻しておこう」といった機関投資家の行動変化が進む可能性があります。金利水準や米国のグロース市場動向を見ながら、お金の流れを感じてください。粛々と進むようなら、新興株でもバリュー株の多いジャスダックが優位に立つはずです。