1月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 新年1月の月間騰落率は、日経平均が+0.8%、TOPIX(東証株価指数)+0.2%。それに対して日経ジャスダック平均が+1.5%、東証マザーズ指数が+1.0%と、新興株市場が東証1部をアウトパフォームしました…という結果ですが、それはあくまで月末終値比較。単純な前月比の変化率ではわからない、濃密過ぎる1カ月で、内容的にも新興株より圧倒的に東証1部(の大型株)優位の展開でした。

 年初いきなり、「緊急事態宣言」の再発動をどう見るか?が焦点に。当初は、前回発動以降に発生したコロナラリーの記憶が新しく、新興株に追い風という見方がありました。ただ、5日に米ジョージア州の決選投票があり、ここでトリプルブルーが確定的に。そして、米長期金利が上げ始めます。これを嫌ったのが、グロース株でした。緊急事態宣言は、DX関連株や巣ごもりメリット株の多い新興株にポジティブ。ただ、米長期金利の上昇も同時進行したため、バリュエーションの高いグロース株は売られました。

 ただ、バリバリのグロース株でも、半導体株だけ急騰するという二極化地合いが発生します。半導体の需給ひっ迫が伝わるなか、売上成長のカタリスト(相場上昇のきっかけ、材料)が付いた半導体株に凄まじい勢いで資金が流入。新興株に半導体株が少なく、東京エレクトロンやアドバンテストなど、東証1部の値がさハイテク株ばかりグイグイ上がり、それが日経平均を持ち上げる展開に。結果、月前半は“日経平均最強“状態が続きました。日経平均が上がり、同じ日本株なのにマザーズは下落するような逆相関が連発。温度差が大きくなり過ぎて、日経平均上がれど上がれど、個人投資家盛り上がらず…な雰囲気でした。

 ただ、月後半に入ると、今度はマザーズ中心に新興株が急伸する場面も。12月の最高潮だった時期ばりに12月IPO(新規公開株)が盛り上がったり、21日にはBASEなどマザーズ主力銘柄が軒並み急騰したり。米長期金利の上昇にブレーキがかかったことが安心感につながったようでした。ただし…これも月末にかけて反転します。そのきっかけが、米国で発生したゲームストップ株騒動でした。ヘッジファンドの空売りが溜まっていたゲームストップなど一部小型株にロビンフッダーと呼ばれる個人投資家が目を付け、SNSで情報を共有しながら、ショートスクイーズ(空売りの買い戻し)を誘発させるマネーゲームに。これで大損害を負ったのがヘッジファンド。ロングショートのショート側のロスカット(ポジション解消)と同時に、ロング側の銘柄も反対売買します。米国で起きた個人投資家の乱によって、優良銘柄が急落し、これが指数を押し下げるという、予期せぬ結末に…。

1月の売買代金ランキング(人気株)

 1月の新興株市場は、12月特有の2大懸念事項(【1】IPOラッシュによる資金吸収、【2】節税目的の損出し売り)がなくなり、地合いが良くなることが毎年期待されます。1月もマザーズの上昇に期待した投資家は多かったと思いますが、月間で上昇したとはいえ、難易度の高い展開でした。コロナ再感染の動向(緊急事態宣言の再発令)、1%を超えた米長期金利の動向など不確実要素が加わったことが理由です。難易度が高いでいえば、前回の緊急事態宣言後に大相場になったDX関連のAIinsideや、巣ごもり特需株の出前館などは下落。一方で、メルカリ、BASE、マクアケなどは上昇と、上がる株と下がる株の違いが見えにくかったことも挙げられます。

 流動性面は、前月に比べて改善。12月末時点では25日移動平均売買代金が100億円超の銘柄がBASE1銘柄でしたが、1月はBASE含めて3銘柄に。そのうち2銘柄(バルミューダ、ウェルスナビ)は12月IPO銘柄でした。また、売買代金ランキング上位20社の中でも、12月IPOが7社ランクイン。上場翌月も売買したくなるような、今後に期待させるIPOが12月は多かったということでしょう。とはいえ、バルミューダを除けばいずれも月間騰落率はマイナス…月後半は良かったものの、月前半の大崩れが尾を引きました。

市場 コード 銘柄名 1月末
終値
時価総額
(億円)
売買代金
25日移動平均値
(億円)
月間騰落率
東証マザーズ 6612 バルミューダ 8,250 656 173.5 68.4%
東証マザーズ 4477 BASE 10,730 2,354 163.6 9.9%
東証マザーズ 7342 ウェルスナビ 2,503 1,141 126.4 -1.1%
東証マザーズ 4167 ココペリ 6,240 462 81.4 -14.9%
東証マザーズ 6255 エヌピーシー 810 179 80.8 6.6%
東証マザーズ 4488 AIinside 64,900 2,495 79.9 -11.6%
東証マザーズ 4385 メルカリ 5,040 7,915 75.5 10.2%
東証マザーズ 4169 エネチェンジ 4,080 238 65.2 -16.7%
東証マザーズ 4485 JTOWER 11,330 2,341 65.1 5.9%
東証マザーズ 4165 プレイド 3,440 1,296 62.8 -7.4%
東証マザーズ 4168 ヤプリ 6,030 724 56.2 4.0%
東証マザーズ 4479 マクアケ 8,850 1,033 48.8 7.3%
東証マザーズ 7694 いつも 4,425 248 44.1 -13.4%
ジャスダック 2484 出前館 2,700 2,308 42.2 -14.0%
ジャスダック 1407 ウエストHD 4,395 1,556 33.8 -7.4%
東証マザーズ 4563 アンジェス 1,198 1,594 33.7 -3.8%
東証マザーズ 4480 メドレー 4,970 1,535 33.3 9.5%
東証マザーズ 4475 HENNGE 8,260 1,322 32.5 -0.7%
東証マザーズ 3914 JIG-SAW 12,800 864 30.7 14.8%
東証マザーズ 6027 弁護士コム 11,700 2,605 29.9 14.3%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 バルミューダ(6612・東証マザーズ)

 ラッシュとなった12月IPOの中で、流動性面でバルミューダがトップに。初値を付けた後の上昇率も同社がトップになったのは意外でした。12月IPOの中で何がバルミューダの特徴か?となると“知名度”です。おそらく一般知名度は同社が一番のはずで、「IPOは知名度がかなり重要」という発想は今後のIPOでも生かせそうです。

 高級家電製品でヒット商品を生み出したバルミューダ。今後の業績でいえば、トースターや扇風機に次ぐヒット商品を生み出せるか?がカギとなります。ただ、これはあくまで今後の焦点。短期的なヒット商品輩出が求められているわけではないので、株価が上がりそうか?というモメンタムだけが重要。とくにこの時期、高値をとる12月IPOがなくなっていたこともあって、需給妙味と流動性の両面で最優先銘柄になりました。

2 ウェルスナビ(7342・東証マザーズ)

 同じく12月IPOで、流動性ではバルミューダの次点。バルミューダとウェルスナビの共通点は、こちらも“知名度”…知名度はIPOのセカンダリーでかなり重要かもしれませんね(テレワークなどを理由に株を始めた新規参戦者も増えたようですし)。

 資産運用を全自動化したロボアドバイザー「ウェルスナビ」を提供しており、日本の上場企業では初モノとなるビジネスモデルです。利用者、預かり資産とも順調に拡大しており、成長イメージも描きやすいといえそうです。上場来高値を付けたのは5日でしたが、月序盤が今のところ人気のピーク。話題になったのは、7日にクープランド・カーディフ・アセットマネジメントによる新規の大量保有報告(発行済み株数の5.02%)でした。上場した12月22日以降、連日市場内で取得していたようです。

3 メルカリ(4385・東証マザーズ)

 マザーズ指数の指数ウエイトは10%超で、影響力は絶大。そのメルカリが、月前半に驚きの上昇劇を演じました。昨年12月28日から上昇が始まり、1月13日まで怒涛(どとう)の10連騰!(この間の上昇率32%!)。メルカリが上昇しても、マザーズ指数が横ばい(=メルカリ以外のマザーズ銘柄が幅広く下げていたということ)という珍しい展開でした。東証1部でも値がさ大型株ばかり買われていた地合いでしたし、海外機関投資家の買いバスケットの中にメルカリだけ含まれていたという感じでしょうか…。

 ただ、それも月後半に急反転。19日付の一部経済紙で、メルカリの米国事業がコロナ禍で逆風に見舞われていると報じられたことが引き金になりました。米国事業の黒字化がカタリストだっただけに、強い売り材料に。2月4日に控える中間決算発表への警戒が浮上しました。

4 プレイド(4165・東証マザーズ)

 12月IPOでは時価総額最大。同社が展開するクラウド型CXプラットフォーム「KARTE」は、サイトやスマホのアプリを使いやすく改善するサービスです。サイトやアプリの集客力を高めるという発想ではなく、せっかく訪問してくれたユーザーの購買行動をいかに促すか?といった発想が非常にユニーク。大手企業の採用実績も豊富で、世界的にも類似会社の存在しない注目ベンチャーです。

 IPO時に注目されたのは、公開株のほとんどを海外投資家に配分したこと。海外配分比率は8割超と異例の高水準で、2019年上場のフリー(約7割)より高かったことが話題にもなりました。これが意味しているのは、IPO価格で海外勢も買いたいIPOだったということ。上場後に市場で取得する海外勢もいたようで、8日付で米キャピタル・リサーチが発行済み株数の5.57%を保有していることを報告しています。

5 マクアケ(4479・東証マザーズ)

 26日発表の第1四半期決算を前に、マザーズ市場の地合い好転に材料も重なって大きく上昇していました。好感された材料は、20日に発表された世界最大級のクラウドファンディングサービスを展開する米インディゴーゴー社との業務提携。マクアケ利用者にインディゴーゴー社のクラウドファンディングを紹介すれば、ビジネス展開が欧米にも広がる大きなメリットが見込めます。

 この材料で株価が上がった状態で迎えた26日の第1四半期決算。10-12月期の売上高は前年同期比91%増、営業利益は同48%増と高い伸び率を示したのですが…発表翌日27日の株価は急落しました。高い成長性を織り込み、超高PER(株価収益率)株となり、時価総額が売上の何倍かを示すPSRで判定される風潮が生まれていました。PSR株は売上の高成長が必須…という点でいえば、10-12月期の応援購入総額が前四半期(7-9月期)と比べて14%減少していた点がネガティブ。四半期決算で乗り越えないといけないハードルがものすごい高くなっていることを示唆しています。

1月の株価値上がり率ランキング

 1月も値上がり率上位は、昨年12月に続いて時価総額の小さい小型株が中心。急騰する前の時価総額が100億円未満の超小型株が20銘柄中17銘柄で、やはり個人の投機勢にとって“時価総額が小さい”ことが仕掛けるにも重要な要素のようです。時価総額が小さい銘柄に何らかの強材料が生まれる、という条件で買い向かうような個人の投機マネーが多くなっています。買い手と売り手の需給ギャップがすさまじく、株価の上がり方もすさまじい…。

 そんな上げ方をした銘柄が非常に多く、強材料があったとはいえ、「なぜ、こんなにこの銘柄は上がったのか?」がわからない銘柄が多かったように思います。これは、12月の値上がり率ランキング上位20も一緒でした。だからこそ、上昇が続かない…12月の値上がり率上位20銘柄は全てランク外となり、急騰銘柄の顔ぶれは総入れ替えでした。

市場 コード 銘柄名 月間
騰落率
1月末
終値
前月末
終値
時価総額
(億円)
ジャスダック 6907 ジオマテック 206.8% 1,313 428 120
東証マザーズ 2586 フルッタフルッタ 97.7% 350 177 35
ジャスダック 4582 シンバイオ 82.1% 690 379 264
ジャスダック 7863 平 賀 75.9% 700 398 28
ジャスダック 5939 大谷工業 74.5% 8,830 5,060 78
東証マザーズ 7049 識 学 69.5% 2,217 1,308 167
東証マザーズ 6612 バルミューダ 68.4% 8,250 4,900 656
ジャスダック 8257 山陽百 66.3% 2,627 1,580 21
東証マザーズ 7043 アルー 62.5% 959 590 24
ジャスダック 6840 AKIBA 61.7% 6,920 4,280 64
ジャスダック 7928 旭化学 59.5% 944 592 37
東証マザーズ 6627 テラプロ 58.3% 1,130 714 105
ジャスダック 4764 NexusB 55.3% 264 170 102
ジャスダック 2927 AFC-HD 53.3% 1,064 694 150
ジャスダック 6347 プラコー 50.1% 1,627 1,084 44
ジャスダック 2425 ケアサービス 47.9% 815 551 34
東証マザーズ 7352 Bエンジニア 44.7% 1,444 998 75
東証マザーズ 4482 ウィルズ 39.3% 1,598 1,147 308
東証マザーズ 2342 トランス 37.4% 632 460 110
東証マザーズ 6193 バーチャレクス 37.3% 762 555 22

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 ジオマテック(6907・ジャスダック)

 月末にかけた数日の急騰で、新興株トップの上昇率に。きっかけは、25日発表のリリースでした。内容は、三井金属と協働で量産体制を整えてきた次世代半導体チップ実装用特殊ガラスキャリア「HRDP」に関し、国内の複合チップモジュールメーカー向けに量産を開始するというものでした。リリース内には、2021年度中に海外の大手実装メーカーでの採用が予定されているほか、2022年度以降も多様な用途で量産開始が計画されているとも記載。

 これを受けて翌日から2日連続ストップ高に。手あかの少ない低流動性銘柄だったこと、2日連続のストップ高買い気配になると制限値幅4倍の拡大措置が適用されること…そうした需給面と制度面を狙った投機買いによって、強材料とはいえ、業績影響が不明の段階から信じられない速度での株価織り込みが起きました。

2 フルッタフルッタ(2586・東証マザーズ)

 アサイーのフルッタフルッタが、想定外の材料でコロナ関連に急浮上。同社は7日、トロント大学がカナダ、ブラジルで実施している新型コロナ患者に対する重症化抑制の臨床研究で、同社のアサイー原料を使用するための実証実験を開始することで合意したと発表。アサイーの購入動機になる新しいエビデンス、アサイーの認知度向上につながると…。

 低位の超小型株ということもあって、このニュースに飛び付く短期マネーが殺到。この銘柄に関しては、空売り残高報告からヘッジファンドの空売りも多いことが知られた銘柄でした。スケールは小さいですが、米国のゲームストップ株で起きたショートスクイーズ狙いの投機売買に似たところもありそうです。

3 識学(7049・東証マザーズ)

 14日の後場、第3四半期の決算を発表。第2四半期まで0.24億円の営業赤字だったのですが、第3四半期では0.36億円の営業黒字に転じていました(とはいえ、前年同期比では8割減益)。コロナの影響は、スポンサー企業の撤退につながり業績面でネガティブ。ただ、黒転に反応してか株価は好反応を示しました。

 決算発表で急騰したのですが、好決算の上昇が長く続かない(むしろ織り込み済みで下落も)時期だっただけに、異例の反応。これは、決算発表の少し後(翌週21日)、一部国内証券が投資判断「A」(目標株価は今の値段を大幅に上回る3,500円)としたことが刺激になったといえます。決算発表の後、マザーズの小型株に最上位で新規カバレッジが付くこと自体が異例…だったとしか後講釈でも表現しにくい事例でした。

4 山陽百貨店(8257・ジャスダック)

 大きなプレミアムが付いたTOB案件で、TOB価格へのサヤ寄せが値上がり要因です。同社の親会社である山陽電気鉄道が13日、完全子会社化を目的として1株2,630円でTOBすると発表。発表のあった13日終値は1,661円でしたので、TOB価格は58%のプレミアムが乗せられた水準でした。子会社の山陽百貨店側も即座に、TOBに賛同意見を表明しています。

 親子上場の解消は昨今増えていますが、どの銘柄が、いつTOBを行うか?は外野からは予想できないわけで…親子上場とか業界再編は切り口として非常に面白いのですが、TOB発表に保有株が巡り合うなんてことは激レアですね。

5 アルー(7043・東証マザーズ)

 21日、2020年12月期の業績予想を、売上高17億円→18億円、営業損益3.1億円赤字→2.1億円赤字に増額しました。コロナ影響で研修見送りが増えることを想定していたものの、オンライン研修実施やeラーニングの受注が予測を上回る好調だったようです。利益面は、コロナ禍で多い理由ですが、営業などでの交通費・旅費のコスト削減が押上げ要因。

 上方修正とはいっても、この期の利益項目は赤字のまま、「赤字縮小」のパターンです。このパターンの業績上方修正で、ここまで急騰するのは意外感が多いのですが…発表前の時価総額が17億円台と超小型株だったため、個人の短期マネー流入で噴き上がったといえます。

2月に注目したい新興株の動き

 2月の新興市場全体でいえば、ミクロで注目すべきは「決算発表」になります。マザーズ銘柄の決算発表は「2月10日~12日」に集中しますが、中でも、市場影響が大きいのは大型の人気銘柄になります。これらが、好決算を出して、株価も上がってくれたらいいわけですが、そんな理想通りに展開することなど滅多にないわけで…。

 何といっても、昨年のコロナラリーで、説明しようがないほど高バリュエーション化したグロース株が続出しました。予想PERで数百倍になり、表現しようがないため、「売上の何倍の時価総額が付いているか?」を測る予想PSR(株価売上高倍率)でざっくり判断するというような風潮が日米で当たり前になりました(過去では、赤字の創薬ベンチャーの規模感を知るのに使われていた程度でしたが)。

 かつては、PSR20倍を超えると高過ぎる、と言われていましたが…今やJTOWERの60倍台、フリーの40倍台など、コロナラリー前には存在しなかった高PSRの大型マザーズ株が存在します。これらが、今回の決算シーズンで、失望につながらないか?は警戒したいところ。参考になるのは、先月のマクアケでしょう。第1四半期の売上/利益項目とも“前年同期比”で大幅に伸びたものの、発表翌日は14%も株価が急落しました。嫌気されたのは、“前四半期比”で売上の伸びが鈍化した点。PSRで評価されている銘柄の判定基準は、「前四半期に比べて売上が大きく伸びているか?」になりそうです。

 マザーズ指数のウエイト上位10銘柄で、予想PSRが20倍を超えている銘柄でいえば、2月10日発表では中間決算のフリー(4478)、本決算のBASE(4477)が重要銘柄。12日発表では第3四半期決算のラクス(3923)、本決算のメドレー(4480)も注目されそう。また、12月IPOで指数ウエイトが1.5%を超えているのはウェルスナビ(7342)、プレイド(4165)の2銘柄ですが、ともに12日に上場後最初の決算発表を予定しています。決算で市場全体が動くとすれば、10日と12日発表のこれら銘柄がカギを握るはずです。

 そして、新興市場全体にとってマクロで注目すべきは、1月に続き「米長期金利」になります。足元の金利上昇は、ワクチン接種の拡大による経済正常化(その先にテーパリング)を織り込んでいるように見えます。世界の先頭に立ってワクチン接種を推し進めるイスラエル(人口900万人のうち3割超が1回以上ワクチンを打っている)では、2回接種した人の1週間経過後のコロナ陽性率が0.01%だったというデータが出ました。2月1日時点で、世界全体ですでに1億回のワクチン投与が行われているとも報じられています。

 その中で、ワクチン接種で先進国周回遅れの日本も、(ようやく)医療従事者から「2月中旬」にも接種を始める意向を菅首相が示しました。ワクチン接種の開始が伝わることを先取り、2月に入るとアフターコロナ株(GoTo関連株、インバウンド関連株など)が急騰し始めています。ワクチン期待で金利が上がり、これまで売られてきた割安株(バリュー株)が上がる…これまでの逆流ですので、これまで買われてきたDX関連株とか在宅特需のEC関連株など新興グロース株には資金が向かいにくい可能性があります。

 個人投資家の逆張りの買いが入っても、長期で保有する機関投資家の資金が入らないと高値圏で株価が定着しにくいのは新興株でも同じ。ワクチンの接種に関するニュースが出てくるにつれ、「アフターコロナ株のウエイトを落とし過ぎていた」とか「空売りしていた分は買い戻しておこう」といった機関投資家の行動変化が進む可能性があります。金利水準や米国のグロース市場動向を見ながら、お金の流れを感じてください。粛々と進むようなら、新興株でもバリュー株の多いジャスダックが優位に立つはずです。