今日の注目通貨

ドル/円: 金利高とドル安のデュエット

 ドル安と金利高が同時進行しています。米金利が上昇するなかでのドル安は、一見すると矛盾しているに思えますが、必ずしもそうではありません。米国金利ばかりに注目が集まりがちですが、他国の実質金利もまた上昇しているのです。

 ただ、中央銀行の政策スタンスを見ると、そこに違いがあらわれています。FOMC(米連邦市場委員会)はハト派的。12月15-16日に開催した2020年最後の会合において強力な緩和政策の維持・継続を決定し、政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を0.00%から0.25%に据え置きました。さらにインフレが上昇してもすぐに利上げはしないと明言していて、利上げは早くても2024年以降になるとの予想です。

 一方、ECB(欧州中央銀行)も、今月の会合で政策金利を現行の0.00%に据え置きましたが、ECB理事の発言は、どちらかというとタカ派的。少なくとも、FRB(米連邦準備制度理事会)に比べると緩和政策拡大に関してECBは一枚岩ではない。この違いが、ドル安(ユーロ高)を演出している大きな要素といえます。

 もっとも、今のFXマーケットでは、金利差はあまり重要視されていません。ワクチンの接種がついに始まり、マーケットのテーマは、金利差からコロナ後の「世界的経済成長」へと移っているのです。

 米国の一極成長あるいは世界的低成長の時代においては、ドルにマネーが集まる傾向がありますが、世界的同時成長の時代では、米国以外の地域の投資妙味が米国に比べて相対的に大きくなり、ドルが売られやすくなります。

 ワクチンが世界中に行き渡る見通しが出てきたということは、コロナ後の経済回復の可能性に関しては、世界中どこも同じチャンスがあることになります。ただ、すでに過去最高値を更新している米国株式に比べて、それ以外の地域は、これまで出遅れていた分だけ投資リターンが高くなると考えられています。

 長期投資家は、ドル資産運用によるアウトパフォーマンスを何年間も積み上げてきましたが、ドル一辺倒のエクスポージャーを減らし分散投資を模索し始めています。ドルを今後も保有したいという強い理由が表れない限り、この傾向は続くことになるでしょう。

 経済回復の期待が徐々に強まり、マーケットのテーマとして「リフレ(デフレ以上インフレ未満の状態)」がじわじわと定着する状況になり、株式と世界の金利が連動して上昇。このようなケースではリスクオフの観点からもドル安傾向が強まります。

 ドルに対して、ユーロだけではなく、資源国通貨の豪ドルやカナダドルが高くなり、新興国通貨に再びマネーの流入が始まっています。


◎天気の判定基準とは?

天気マークを見るだけで、ドル高で引けたのか、それともドル安で引けたか、ひと目で確認することができます。

・「晴れ」
当日の終値が、前日の終値に比べて0.20円を超えるドル高/円安だった場合は、「晴れ」の天気マークを表示します。

・「雨」
反対に、終値が0.20円を超えるドル安/円高だった場合は、「雨」の天気マークを表示します。

・「くもり」
終値が上下0.20円の範囲にあった場合は「曇り」のマークを表示します。

※天気マークは、前日の終値との比較を示したもので、今日のマーケットの方向を予想するものではありませんので、ご注意ください。