なぜ、TOPIXが日経平均に出遅れているの?

 日経平均とTOPIXの算出方法の違いを中心に、TOPIXが出遅れている理由を考えてみたいと思います。おそらくは、単一の要因ではなく、複数の要因が重なっていそうです。

(1)日経平均のウエイト要因

 日経平均のウエイトは偏りがあることが知られています。225銘柄により構成されているのですが、最もウエイトが高いファーストリテイリングは1社で11.41%を占め、上位3社(ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン)では22.19%、上位10社で40.49%にもなります。

 日経平均は、みなし額面による調整後の値がさ株に左右されやすいという特徴があります。一部の企業の株価が好調なだけでも、TOPIXとのかい離が大きくなります。

(2)東証改革の遅れを反映?

 現行制度では、東証1部に直接上場する場合、時価総額が250億円以上必要ですが、東証2部およびマザーズから東証1部に市場変更する場合には、必要な時価総額は40億円以上と基準が緩和されています。

 東証制度改革で基準緩和が廃止される見込みですが、これまで成長の見込みが高くない企業が東証1部に上場したり、あるいは、いわゆるゾンビ企業が東証1部に居続けるという問題がありました。

 東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場体制から、プライム、スタンダード、グロースの3区分に再編し、TOPIXの銘柄選定・新しい算出基準を設定するという議論があります。

 選別された銘柄で構成される日経平均と東証1部に上場している企業全部とでは、業績に開きがあります。逆に言えば、日本経済の実力は、残念ながら日経平均よりもTOPIXに近いのかもしれません。

 また、選ばれた30社(ダウ平均)のパフォーマンスを500社(S&P500)のパフォーマンスが上回るという、米国のような産業の裾野の広さと厚みが日本には欠けているようにも見えます。

(3)日本銀行によるETF買入れ効果?

 日銀によるETF(上場投資信託)の買入れが株価の水準を引き上げているのではないか、という説があります。日銀が保有するETFは裏付けとして、現物の株式が必要なので、日銀がETFを購入するほど、市場で流通する株式が減ることになります。

 TOPIX連動型を購入する影響は東証1部全体に及ぶ一方、日経平均連動型は日経平均を構成する銘柄にのみ影響するので、相対的に日経平均を構成する銘柄の方が、日銀によるETF買いの影響を受けやすくなります。

 日銀のETF買いで市場の厚みが損なわれ、日経平均(特にウエイトの高い銘柄)の価格変動が大きくなっているのかもしれません。

 個別銘柄の事情はあるにせよ、今年3月の相場急落時にNT倍率が下がり(日経平均がTOPIXよりも大きく下げ)、相場上昇時にNT倍率の上げが急になったことは、日銀によるETF買いの影響がある傍証のようにも見えます。

 指数連動型の投資信託やETFは、手数料も安く、長期投資に向いています。それでも、代表的な指数でも大きな違いがあります。楽天証券のサイトにある、「インデックス図鑑 市場のモノサシ「インデックス(指数)」を使いこなそう」などを参考に、賢い投資を心掛けたいものです。