新型コロナ・ショック後、金とビットコインの連動性が高まった

 以下のグラフは、ビットコイン(ドル建て)とNY金先物の価格動向を示しています。新型コロナ・ショックを境に、相関係数が高くなったことがわかります。

 相関係数は、2つの値の連動性を示す指標の一つで、+1から▲1の間で決まります。+1に近ければ、2つの値は高い連動性をもって推移した(上昇と下落の波が同じだった)ことを意味します。▲1に近い場合は、逆相関性が高いことを意味し、上昇と下落の波が逆だったことを示します。

図:ビットコイン価格(ドル建て)とNY金先物(期近)価格

出所:マーケットスピードⅡおよびInvesting.comのデータをもとに筆者作成

 2019年8月下旬から2020年3月の新型コロナ・ショックが起きるまで、これらの価格の相関係数は+0.36でした。つまり、ほとんど2つの値動きは関わり合っていませんでした。しかし、新型コロナ・ショック以後、相関係数は、一般的に高い連動性が認められる+0.7を超え、+0.86になりました。

 金とビットコインに高い連動性が認められるようになった背景を考えるため、相関性が強まる3つのパターンについて確認します。

 1つ目は、2つの値動きに因果関係があるパターンです。このパターンは株価と原油価格の間で、しばしば見られます。株価が上昇した場合、景気が回復して消費が増加する期待が高まり、それにより石油の消費が増加する期待が生じ、原油価格が上昇するパターンです。

 この結果、“株価上昇・原油価格上昇”が発生し、相関性は強まります。株価の上昇が原油価格の上昇の要因(2つの値動きに因果関係あり)となり、その結果、相関係数が高くなるパターンです。

 2つ目は、共通の変動要因によって2つの銘柄の価格が動き、その結果、相関係数が高くなるパターンです。2つの銘柄が直接的に関わり合って(因果関係があって)価格が推移するのではなく、共通の変動要因がそれぞれに別々に作用し、その結果、2つの銘柄に連動性が生じ、相関性が強まるパターンです。

 以前述べた、米国で大規模な金融緩和が行われている時に起きる“株高・金高”がその例です。

 FRB(米連邦準備制度理事会)による、金利の引き下げや資産の買い取りが、金融緩和における具体的な施策ですが、これらが行われることで、個人や企業は資金を調達しやすくなったり、金融機関が資金繰りをしやすくなったりして、景気が回復する期待が高まります。この景気回復期待の高まりが、株高の要因です。

 これとは別に、金利の引き下げや、資産の買い取りによって起きる通貨の流通量の増加により、他の通貨に比べて相対的に、ドルの保有妙味が低下する場合があります。この時、“世界共通のお金”という側面を持つ、ドルと金(ゴールド)の関係において、金が優位になり、金高が起こることがあります。

 米国の大規模な金融緩和が、株式市場と金市場、別々に作用し、“株高・金高”が起き、連動制が高まり、その結果、相関性が強まるわけです。

 3つ目は、もともと2つが似た属性を持っているパターンです。例えば、ガソリンと灯油という2つの石油製品の価格が似通っていることについては、それらが原油から作られるという共通点を持っていることで、一定の説明ができます。原油価格(この場合、原材料価格)が変動すれば、そこから作られる石油製品の価格も、特段の理由がない限り、原油価格と同一方向に変動するためです。

 新型コロナ・ショック以降の、ビットコインと金の高い相関を説明する上で、この3つ目のパターンの考え方を用いることが有効です。