今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「国内株式」「外国株式」を選択したお客様の割合に注目します。
当該質問は複数回答可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF、REIT、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になし、の13個です。
図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「国内株式」「外国株式」を選択した人の割合 (2016年1月~2020年7月)
2020年7月の調査では、「国内株式」を選択した人の割合は49.76%、「外国株式」は44.32%でした。
2016年6月の英国のEU離脱を問う国民投票、同年11月の米大統領選挙という、これまでの世界の秩序を大きく変える結果となった2つのイベント後、国内株式と選択する人の割合が低下、逆に外国株式を選択する人の割合が上昇し始めました。
当時、“トランプ・ラリー”と言われた、トランプ氏がもたらす、米国の大統領がこれまでに行ったことがないような、さまざまな策を市場は好感し、それに伴い、米国株は高値を更新し続けました。
中国との貿易戦争、大規模な法人減税、北朝鮮の首脳との歴史的な会談、イランやベネズエラへの制裁など、トランプ大統領は“国内第一”を掲げ、米国国内の古き良き産業を守り、再興するように働きかけながら、台頭しつつある中国を強くけん制したり、思惑に反する国に制裁を課したりして“世界の警察”をほうふつとさせる、行動をしてきました。
SNSを駆使し“劇場型”と言える、異彩を放つトランプ大統領の行為に、米国の株式市場はいつの間にか巻きこまれ、史上最高値を更新し続けました。少なからず、米国の株式市場の上昇劇は、国内株式への投資意欲が減退する一因になったと考えられます。
そして、コロナ禍の今でも、外国株式を選択する人の割合が上昇し続け、国内株式を選択する人の割合は2016年以降の低水準のままです。
新型コロナが米国経済に大きなダメージを与えていることは明白ですが、それでもなお、外国株式を選択する人の割合が上昇を続けているのは、単純に、ハイテク企業を中心に、米国株に魅力があることに加え、円高などの弱材料に悩まされている国内株式よりも、相対的に米国株が魅力的に見えるためだと考えられます。
このような状況が続けば、近い将来、国内株式と外国株式の割合が逆転する可能性があります。国内株式が50%を大きく割り込んだり、外国株式が大きく上昇したりした場合、容易に逆転する可能性があります。
国内株式と外国株式が逆転した時には、日本の個人投資家の思考に、地殻変動が起きはじめており、その後、本格的に日本で、米国株を中心とした外国株投資が広く、そしてそれまでにないスピードで普及し始める可能性があると、筆者は思います。
次回以降も、「国内株式」「外国株式」を選択した個人投資家の皆様の割合に、注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2020年7月調査時点 (複数回答可)
投資対象 | 割合 | 前回比 |
---|---|---|
国内株式 | 49.76% | ▲ 5.08% |
外国株式 | 44.32% | +2.73% |
投資信託 | 35.54% | +0.60% |
ETF | 28.19% | +1.18% |
REIT | 9.93% | ▲ 1.93% |
国内債券 | 4.46% | +0.17% |
海外債券 | 5.77% | ▲ 0.31% |
FX(外国為替証拠金取引) | 8.69% | +0.61% |
金やプラチナ地金 | 20.85% | +3.08% |
金先物取引 | 2.93% | +0.17% |
原油先物取引 | 1.41% | +0.22% |
その他の商品先物 | 2.67% | +0.75% |
特になし | 8.73% | ▲ 0.40% |
出所:楽天DIのデータより筆者作成 |
表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年7月調査時点 (複数回答可)
国名 | 割合 | 前回比 |
---|---|---|
日本 | 33.53% | ▲ 6.28% |
アメリカ | 60.27% | +4.36% |
ユーロ圏 | 7.41% | +1.53% |
オセアニア | 4.95% | +0.52% |
中国 | 11.73% | ▲ 1.01% |
ブラジル | 2.73% | +0.30% |
ロシア | 1.62% | ▲ 0.02% |
インド | 23.43% | +4.65% |
東南アジア | 18.48% | +1.88% |
中南米(ブラジル除く) | 1.77% | +0.27% |
東欧 | 1.88% | +0.43% |
アフリカ | 4.31% | +0.45% |
特になし | 10.25% | ▲ 1.77% |
出所:楽天DIのデータより筆者作成 |