IT革命を工業生産力モデルの枠組みの中で理解し、失速した日本

 ここで日本企業の株式時価総額の上位10社の推移を紹介します。

 工業生産力モデルの一定点に到達した1980年の株式時価総額1位はトヨタ自工(*2)、次いで松下電器産業(現パナソニック)、日産自動車の順でした。

*2:1982年にトヨタ自工とトヨタ自販が合併してトヨタ自動車になった

 バブルがピークを迎えた1990年の上位3社は日本電信電話、日本興業銀行、富士銀行。

 2019年(9月末時点)の上位3社はトヨタ自動車、NTTドコモ、ソフトバンクグループ。10位にKDDI。携帯電話の回線業者が上位に入っていることから、日本企業もIT革命のインパクトを受けたことが分かります。

 つまり、日本人もインターネットの時代が来ることは予測していました。回線業やeビジネスモデルに目をつけ、半導体などの電子部品の分野でも存在感を示すことができたのです。

 ところが、IT革命が第2段階に入り、ビッグデータ、AI(人工知能)、データリズムという言葉が飛び交う状況になると、にわかに日本の失速が目立つようになり、日本版GAFAが生まれることはなかった。その原因は、日本人がIT革命を工業生産力モデルの枠組みの中でしか理解できなかったところにあると私は考えています。