「年金財政検証」って何?

年金財政検証は、年金制度が100年後も続けられるか、5年に一回調査すること

シノちゃん まず、年金財政検証っていうのは、国民年金や厚生年金の公的年金制度を、100年先も続けることができるか調査すること。5年に一回、国がその機会を作っているの。

100年後なんていう、チョー先の未来の人の年金も考えるなんて、すごいわよね。それを調査するために、人口推計や経済状況などを使って、いろんな可能性を考える必要があるんだって。

 

「老後資金2,000万円不足」の次は「年金2割減」⁉一体どういうこと?

岡本くん その年金財政検証で調査した結果、年金が2割弱、目減りすることが分かったの? いつから年金が減るの? ど、どうしよう~。

シノちゃん まあまあ、ちょっと落ち着いて。

 実はこの結果自体は、5年前の財政検証から大きく変わっていないのよね。つまり、私が生まれる前から、分かっていたことなの。

 今回「年金が2割弱、目減りする」と言われているのは、将来の年金給付水準を判断する指標の所得代替率が、現在の61.7%から、約30年後には50.8%まで低下することを指しているみたい。

岡本くん しょ、しょとくだいたいりつ? 確率? 円周率? 数学は苦手なんだけど。

シノちゃん 大丈夫。私が教えてあげるから。

 所得代替率っていうのは、お父さんやお母さんなど現役世代と呼ばれる人たちのボーナスも入れた手取りのお給料を1としたとき、おじいちゃん、おばあちゃんたちがもらえる年金はこれくらいの割合だよという数字のこと。

 さっき出てきた、61.7%とか50.8%っていう数字がそう。例えば、うちに入ってくるお給料が年間500万円だとしたら、その61.7%にあたる308万5千円がおじいちゃんたちの年金額になる。この年金額が、30年後には、50.8%にあたる254万円になると予想したものね、ざっくり言うと。

岡本くん へー。そういうことなのか。

シノちゃん 日本の公的年金制度は、働いてお給料があるお父さんやお母さんなど現役世代が納めた年金保険料と税金などから、今のおじいちゃん、おばあちゃんたちに年金を払っているのよ。これが「賦課(ふか)方式」と呼ばれる仕組みなの。

岡本くん じゃあさ、30年後に現在の割合よりも減るなら、もっとその先の将来の年金は減っていくんじゃない? 人口が減るんだし。それなら年金保険料を払わないよっていう人、出てくるんじゃない?

シノちゃん そう勘違いする人、多いかもね。

「年金が2割弱目減りする」というのは、あくまでも所得代替率という参考値の数字上の変化前回、教えたけれど、払う年金保険料が高い人はもらえる年金額も高いから、もらう年金額が直接2割減るってことじゃないわよ。

 年金保険料をきちんと払い込んでいる人が、将来年金をもらえないということはないし、逆に言うと、きちんと年金保険料を払っていないと、将来年金はもらえないわよ。しかも、受け取るときは、自分が払った総額以上の年金額になるからね。

 ちなみに、公的年金の保険料を払っていない人は、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の加入資格もないの。これは知らない人も多いから気を付けて!

岡本くん そうなのかー、きちんと払わないとダメだね。

シノちゃん 「年金2,000万円問題」のときも勘違いしていた大人が多かったけど、そもそも国が運営する公的年金は、現役時代と同じ生活水準を保障する制度ではないの。

 公的年金が保障しているのは、「終身にわたる老後生活の支え」。最初から「現役世代と同水準の収入」を保障しているわけではないから、現在30代後半の大人なら、「良くて現役世代の収入の50%程度」とざっくり思っておいて。5年以内に所得代替率が50%を下回ることが予想されたら、年金制度の仕組みを見直すことが法令で決まっているから、あまり悲観的にならなくても大丈夫!