イラン石油制裁猶予期限終了は、原油相場の短期的には上昇、中長期的には波乱要因?

 上記の点をまとめると以下のようになります。

 【1】制裁遵守率は上がるのか? イラン産原油の不買は徹底されるのか?
       → 制裁の足並みが揃わず、想定外の供給増加が発生する可能性あり

・2015年12月までの前回の制裁時、中国への輸出量は増加した模様。イラン産石油を買う国が存在した。
・現在、“仕向地不明”の輸出(ヤミ輸出の一部か)が増加している。

 【2】8カ国の輸入禁止を口実にOPECが増産をしないか?
       → 昨年同様、制裁を口実にOPECプラスが増産を始める可能性あり

・2018年6月の総会でOPECプラスは限定的な増産実施を決定。イランの供給減少を補う目的と言われていた。
・昨年、制裁を口実に減産期間中のサウジ、ロシアが大幅に増産した。
・大幅増産が2018年10月の原油価格急落に拍車をかけた。

 足元、イラン石油制裁の猶予期限終了の報道を受け、原油価格は上昇、高止まりしています。短期的には、供給減少懸念から上値を伸ばす可能性はあると思います。イランが制裁に対抗し、中東情勢が緊迫化すれば、供給減少懸念がより高まり、さらに上値を伸ばす可能性もあります。

 しかし、今後、制裁が遵守されていないことがデータで確認されたり、6月の総会でOPECプラスが条件付きで増産を決定したりした場合、この猶予期限終了がきっかけで原油相場が不安定化する可能性もあると思います。

 必ずしも、イラン制裁の件が原油相場の上昇要因とは限らないことに留意が必要だと思います。

※5/6(月・祝)に後編を公開します。お楽しみに!