過去20年の半導体サイクル振り返り

 それでは、過去20年のシリコン・サイクル(半導体産業の好不況サイクル)を簡単に振り返ります。まず、過去20年の世界半導体出荷額と、SOX指数(米国の半導体株価指数)の動きを見てください。そこに、過去20年のシリコン・サイクルが表れています。

世界半導体出荷金額(3カ月移動平均):1997年1月~2018年8月

出所:SIA(米国半導体工業会)より作成

SOX指数(米国半導体株価指数)の推移:1996年12月~2018年10月(29日)

出所:ブルームバーグより作成

 ITバブルと言われた1999年にも、半導体の大ブームがありました。この頃の半導体の主用途は、パソコン(PC)でした。20世紀には、PCの成長とともに半導体産業も成長しました。PC買い替えサイクルが、シリコン・サイクルを形成していました。

 1999年には、インターネットの登場でPCの成長期待が異常に高まり、株式市場でIT関連株や半導体関連株が、異常な高値まで買われました。ところが、後から振り返ると、それはバブルでした。2002年には、IT需要が大きく落ち込み、ITバブル崩壊不況が起こりました。

 その後、半導体産業は、長期停滞局面に入りました。PCの成長がなくなったことが影響しました。2008年にリーマンショックが起こると、さらに落ち込みました。

 ただ、後から振り返ると、そこから、半導体業界の大復活が始まっています。今、半導体業界は、久々の世界的ブームに沸いています。半導体ブームをけん引しているのは、データセンターや高機能スマホで使われる、半導体メモリです。

 クラウド・コンピューティングが普及し、個人でも大容量の動画を簡単に保管できるようになったことから、データセンターでのメモリ需要が急拡大しています。2019年より、世界的に、5G(第5世代移動体通信)への移行が始まると、データセンターでのメモリ需要は一段と拡大が予想されます。

 他にも、半導体を使う分野が急速に増えています。自動車の電装化・電動化が加速しており、自動車は半導体需要をけん引する重要分野となりつつあります。IoT(モノのインターネット化)の普及も、半導体需要を増加させています。産業用機器でもIoTが広がり、半導体需要拡大に寄与しています。

 急拡大する半導体需要に、供給が追いつかない状態が長引くうちに、半導体スーパーサイクルが始まったという声が出てきましたが、足元、半導体メモリの需給が緩み、半導体ブームがいったん終わることが懸念される状況となっています。

 私は26歳だった1987年に、投資顧問会社で、日本株ファンドマネージャー兼アナリストとなりました。その時、アナリストとして最初に担当したのが、半導体産業でした。それから、2013年まで、日本株のファンドマネージャー兼アナリストをやりました。いろいろな業種を担当しましたが、半導体業界について、常に考え続けてきました。

 半導体産業、厳密に言うと、半導体メモリは波の大きいビジネスです。誰もが強気で半導体メモリの好調が続くと思っているときに突然ピークアウトし、半導体不況が始まります。もう、半導体メモリでは稼げないと思われている、半導体不況の大底から、突然、急回復が始まります。

 半導体産業の業況をこれからもしっかり見て、気づいたことがあれば、ご報告します。

 

 

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