事業別、所在地別の2つのセグメント情報を見ると、イオンの2つの構造変化がわかります。

  1. スーパーストアの利益は低迷、金融・不動産・ドラッグストアの利益拡大で最高益達成
  2. 国内の利益が伸び悩む中、海外の利益が拡大トレンド入り

 象徴的なのは、イオンの中核ビジネスであったGMS(総合スーパー)が3-5月期で赤字であることです。SM(その他スーパー)もあまり収益を稼げていません。それでも、金融・不動産、ドラッグストアの利益成長によって、連結営業利益で最高益を更新しています。

 所在地別セグメントでも、同じ現象が見られます。海外でも、小売業ではそんなに利益を稼げていません。それは、事業別セグメントの「国際」部門の営業利益が1億円しかないことからわかります。ただし、金融・不動産の海外利益が拡大しているため、海外部門全体で、81億円の営業利益を稼ぎ出しています。

 現在のイオンは、必ずしもスーパーストアで稼ぐのではなく、金融・不動産・ドラッグストアなどを含めた、連結全体で、利益を成長させるビジネスモデルに転換しています。金融・不動産業は、イオンのショッピングセンターと不可分です。イオンのショッピングセンターがにぎわっているからこそ、イオンの金融・不動産業の収益が拡大する構造です。

 イオンは、金融・不動産を含めて、2018年3-5月期に、海外で営業利益の2割を稼ぐまでになっています。今後、海外収益の構成比がさらに高まっていくことが、予想されます。

 

イオンは構造改革によって総合スーパーを「強い小売業」に転換

 イオンのショッピングセンターに行けばわかりますが、総合スーパーはもはや専門店と競合する存在ではありません。今は、ユニクロなど人気の専門店を積極的に取り込み、ショッピングセンター全体の魅力を高める戦略を取っています。

 自前の売り場は、競争力のある生鮮食品や、競争力のあるPB(トップバリュ)などを中心にして、専門店と競合する衣料品や雑貨の売り場は縮小しています。つまり、イオンは、専門店と競合せず、共存する存在になっています。

 外部テナントを取り込むと、そこからは賃貸収入が入ります。今やショッピングセンターは小売業(自前の売り場)と、不動産業(テナント管理)のミックスとなっています。さらに、魅力的なGMSを全国に展開することで、クレジットカードや銀行などの総合金融業の利益成長も見込めます。

 このようにしてイオンは、総合スーパー事業を衰退ビジネスから再び成長するビジネスに変えたのだと思います。

 自前の売り場にこだわらず、魅力的な空間を作ることで稼ぐ発想は、不動産業のものです。魅力的な立地をおさえている不動産業が、小売業に参入すると成功しやすいのは、もともと自前の売り場がないからです。JR東日本が駅ナカなどに展開する「ルミネ」や、三井不動産が展開する「ララポート」は、魅力的な空間を作り、競争力の高い専門店を呼び込むことで、競争力のある小売業を作ることに成功しています。