前回は、国内商品先物銘柄のカテゴリから、貴金属を紹介しました。今回は石油についてお話しします。
図:楽天証券で取引ができる国内商品先物の石油関連銘柄
※楽天証券では2017年11月22日(水)現在、軽油、中京ガソリン、中京灯油の新規について、新規注文をお受けしておりません。
原油は近年、原油ETN(証券コード2038)の登場により、東京商品取引所における原油の売買が大幅に増加しました。これにより売買が行われた結果を示す出来高が急増しています。
図:東京原油・ガソリン・灯油先物の出来高の推移 単位:枚
出来高の多さは、原油に次いで、ガソリン、灯油の順となっています。
また、原油(東京商品取引所で取引されているTOCOM(東京商品取引所)ドバイ原油先物)と、世界の原油価格の指標とされる米国で取引されているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物、そして欧州で取引されているブレント原油先物の値動きとの関係は以下のとおりです。
リーマン・ショック後の急落から反発色を強めた2009年1月を100として指数化しています。
図:TOCOMドバイ原油先物(期先)、WTI原油先物(期近)、ブレント原油先物(期近)の値動き
2009年1月を100として指数化 参照価格はいずれも月間平均
2010年から2013年まで発生したアラブの春(中東・北アフリカ地域での民主化の波)で、地理的に生産地が近い北海ブレント(生産地はイギリスとノルウェーの間の北海)が、やや上ブレしたものの、おおむね、WTI原油とブレント原油は同じ動きとなっています。
一方、TOCOMドバイ原油は、WTI原油と北海ブレントに比べ、下ブレしたり上ブレしたりしています。
これは、取引される際の通貨が異なる点が主な要因です。TOCOMドバイ原油が“円建て”、WTI原油とブレント原油が“ドル建て”で取引されています。
以下は、TOCOMドバイ原油の価格を、WTI原油の価格で除した、TOCOMドバイ原油・WTI原油の価格比と、ドル円の値動きを示したものです。
図:ドバイ原油・WTI原油の価格比(ドバイ原油÷WTI原油)(左軸)と、ドル円(右軸)の値動き
参照価格はいずれも月間平均
TOCOMドバイ原油とWTI原油の価格比は、値が上昇すればするほど、TOCOMドバイ原油がWTI原油よりも強いことを、下落すればするほどTOCOMドバイ原油がWTI原油よりも弱いことを意味します。
世界の原油の指標であるWTI原油に対してTOCOMドバイ原油が強いとき(価格比が上昇する時)、ドル/円は上昇(円安方向に推移)しています。逆もしかりで、TOCOMドバイ原油がWTI原油に比べて弱いとき(価格比が下落する時)、ドル/円は下落(円高方向に推移)しています。
世界の原油の指標であるWTI原油の値動きに対するTOCOMドバイ原油の価格のブレは、ドル/円の変動によって生じていることがわかります。
実際の取引の際は、指標とする原油がドル建てであり、取引する原油が円建てである点に注意が必要です。
以下は、ガソリンと灯油についてです。
図:ガソリンと灯油の値動き(期先つなぎ 月間平均) 単位:円/キロリットル
参照価格はいずれも月間平均
ガソリンも灯油も、同じ原油という原料から作られる石油製品であるため、原料である原油の値動きに追随する傾向があります。このため、これらの石油製品はおおむね同じ値動きになります。
ただ、ときとして、上昇時にどちらかがどちらかよりも大きく上昇、下落時にどちらかがどちらかによりも大きく下落、というブレ(強弱)が発生します。
以下は、ガソリン価格から灯油価格を引いた価格差です。
図:ガソリンと灯油の価格差(ガソリン-灯油 期先つなぎ) 単位:円/キロリットル
参照価格はいずれも月間平均
※このグラフは“期先限月同士”の引き算の値です。実際の取引(特に価格差に着目したさや取引)の参考にする場合、保有した建玉の限月が5番限よりも期間が短くなった後の価格差はこのグラフに記載されていませんのでご注意ください。
ガソリンと灯油の期先限月同士の価格差は、季節的な習性が見られます。冬から夏にかけてガソリンよりも灯油が強くなり、夏から冬にかけて灯油よりもガソリンが強くなっています。
一般的には、冬から夏にかけては灯油よりもガソリンが強く、夏から冬にかけてはガソリンよりも灯油が強くなる、というイメージかと思いますが、このイメージと東京商品取引所のガソリンと灯油の価格の関係は逆になっています。
以下は、2017年1月4日(上)と2017年7月3日(下)の、ガソリン(左)と灯油(右)の価格表です。
図:ガソリンと灯油の「1月」の価格表 単位:円/キロリットル
図:ガソリンと灯油の「7月」の価格表 単位:円/キロリットル
上記のマーケットスピードCXの相場表のように、ガソリン・灯油は、ともに合計6つの限月の取引が行われており、最も取引量が多い傾向があり、多くの投資家が取引する限月である期先限月は、6カ月先に納会を迎える限月です。この期先限月の属する季節が、その時、ガソリン・灯油のどちらが強含みやすくなるかの参考になると考えられます。
今回は石油関連銘柄についてお伝えしました。次回は農産物を予定しています。