SUV競争激化でシェア重視の値下げ戦略、今後の利益率悪化を懸念

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
02333 長城汽車 (グレート・ウォール・モーター)  5.94 HKD
(04/07現在)
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中国国内のSUV市場で競争が激化する中、長城汽車は2016年に積極的な値下げ戦略を取る方針を明らかにした。SUV市場でトップシェアを守るとともに、主力車種「H6」のナンバーワンの座を維持するのが目的。ただ、BOCIは販売台数の押し上げを見込む一方、利益率悪化につながるとして値下げ戦略を懸念。さらに競合他社が値下げに追随した場合、SUV市場全体の採算性を損なう可能性に触れ、同社の利益見通しの不透明感を指摘している。利益率を犠牲にした値下げ戦略がどの程度、販売台数上乗せにつながるかが、この先の業績決定要因になるとの見方だ。同社の現在株価が同業銘柄より割安水準にあると指摘した上で、株価の先行きに対して中立見通しを据え置いている。

同社の3月の販売台数は前年同月比3.2%増、前月比40.9%増の8万3531台。車両タイプ別ではSUVが前年同期比6.2%増加する半面、セダン車およびピックアップトラックは引き続き低迷し、それぞれ同20.1%、2.1%の落ち込みを示した。SUV部門では生産増強や在庫減を背景に、「H6」シリーズの販売台数が同46.5%増。月別で過去最高となる4万6000台超えを達成した。「H2」シリーズは生産ラインを天津市から河北省保定市徐水に移転した影響で同32.6%減の1万768台にとどまったが、BOCIは4月には回復するとの見方だ。一方、「H8」および「H9」は引き続きさえず、月間販売台数が1000台に届かなかった。

同社は3月16日、H6シリーズの中ではローエンドモデルに当たる「H6アップグレード版」の販売価格ガイドラインを1万元の幅で引き下げた。BOCIはこれを受け、4月後半にもハイエンドの「H6クーペ」が投入される可能性を指摘している。なお、同社は値下げ戦略に絡んで生産配置を調整。「H6」の販売増に備え、「H2」の主要生産ラインを天津から徐水にシフトした。

四半期ベースで見ると、16年1-3月期の販売台数は前期比12.3%減の23万3426台にとどまった。ただ、低利幅のセダン車が同26.9%減少する半面、高利幅のピックアップトラックと「H6」シリーズが前期並みで推移し、製品ミックスは改善。「H6」の売上構成比は前期の45.3%から52.0%に上向いた。BOCIは前期のコスト高や主力モデルの値引き率が横ばい推移した点を指摘し、16年1-3月期には販売台数の落ち込みにもかかわらず、前期比で増益を確保するとの見方。ただ、利益率が高水準にあった前年同期との比較では、約20%の減益を余儀なくされるとみている。

BOCIは16年、17年の利益について、予想水準の達成は可能との見方。現在株価の16年予想PERが6.6倍と、同業銘柄(おおむね8-10倍の範囲)を下回る点を指摘した。ただ、この先の利益率および利益見通しに関してはやや慎重。目標株価を16年予想PER7倍の水準に据え置き、中立見通しを継続している。