月を跨ぐ格好となった今週の国内株市場ですが、日経平均の水準が切り上がる展開をみせています。月初となる12月1日(木)の終値は18,513円となり、終値ベースでの日経平均の年初来高値(18,450円)を更新しました。

(図1)日経平均(日足)の動き(その1)(2016年12月1日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

まずは、足元の状況をいつもの通り上の図1で確認してみます。

前回(11月24日時点)は、迷いを示す「十字足」と、過熱感を意識させる「三空」の出現により、高値警戒感の兆しが覗かせている旨を指摘しましたが、冒頭でも触れた通り、日経平均の水準自体は前回時点よりも一段高になっています。ただし、上昇の勢い自体には陰りが見えており、高値警戒感は燻り続けています。

その理由のひとつはローソク足の並びです。上の図1にもある通り、前回からのローソク足に注目してみますと、十字線(11月25日)、上値が押さえられた短い陽線が2本(28日~29日)、ほぼ出会い線に近い陰線(30日)、そして、上ヒゲの長い陰線(12月1日)と続いています。結果的に上昇はしているものの、買いの勢いがあまり感じられない状況です。

また、下の図2は日経平均のATRの推移を示したチャートです。

(図2)日経平均とATRの推移(2016年12月1日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

ATRとは、「アベレージ・トゥルー・レンジ」と呼ばれ、値動きの大きさを教えてくれるテクニカル指標です。トゥルー・レンジ(本当の値幅)という言葉にある通り、以下の①~③のうち、もっとも大きい値幅を採用し、その値を移動平均化しています。移動平均の日数は14日が一般的です。

  • 当日高値-当日安値 …その日の値動きの大きさ
  • 当日高値-前日終値 …前日終値から伸ばした上値の大きさ
  • 前日終値-当日安値 …前日終値から押し込まれた下値の大きさ

ATRはトレンド発生中にウォッチしていくことで、トレンドの勢いを探るヒントになります。トレンド発生中にATRが上昇していればその勢いが強く、反対にATRが下降していれば勢いが弱まり、そろそろトレンドが転換するのではという考え方です。

あらためて図2を見てみますと、先ほどのローソク足の並びに該当する期間のATRがちょうど下降していることが分かります。そのため、テクニカル的にはいつ調整に入ってもおかしくないのですが、それとは裏腹に株価水準がステップアップしているのが足元の相場です。ただ、先ほどのように、日々のローソク足の形を見てしまうと、なかなか買いに行く勇気も持てないという、もどかしい状況が続いています。

その調整のきっかけになりそうなのが、「株価水準の達成感」もしくは「イベント通過のタイミング」ですが、株価水準については、25日移動平均線プラス6%乖離の水準(足元では右肩上がりの25日移動平均線によってプラス6%の乖離株価も切り上がっています)、ザラ場ベースの年初来高値(18,951円)、節目の19,000円などが意識されそうです。また、イベント通過については、まずは週末の米雇用統計(2日)をはじめ、イタリアの憲法改正を巡る国民投票(4日)、再来週の米FOMC(13日~14日)あたりが注目です。さらに、来週末(9日)はメジャーSQですので、日経平均オプション取引の権利行使価格250円刻み(17,750円、18,000円18,250円、18,500円、18,750円、19,000円)も上値や下値の目安になるかもしれません。

短期的には、上昇トレンドが継続している割に利益を出すのが難しい状況が続いていますが、最後に中期的な視点でも確認してみます。下の図4は日経平均の週足チャートです。

(図3)日経平均(週足)の動き(2016年12月1日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

想定トレンドラインや、26週移動平均線と52週移動平均線のゴールデンクロス待ちなど、基本的な見方は前回と変わっていませんが、昨年8月と12月につけた高値どうしを結んだ線を引いてみる(ライン①)と、別の風景が見えてきます。

日経平均は10月下旬にこの高値どうしを結んだ線を上抜けして上値をトライしているように見える状況ですが、いったん天井をつければ、その時点の高値と昨年8月高値を結んだ線が描かれることになります(ライン②)。

今後、昨年8月高値を基準に「扇型トレンド」が描かれるのであれば、株価はライン②が引かれた後、ライン①とのあいだで推移し、ライン②を上抜けると、今度はライン③を探っていく展開となる可能性があります。

日経平均の推移がこの扇型トレンドを見据えた動きであるならば、ライン①の水準まで下落する可能性があります。ただし、長い期間をかけて描いてきた想定トレンドラインが存在しているため、この想定トレンドラインがどこまでサポートとして機能するのかが目先の注目ポイントになりそうです。